応用地質
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報告
2011年東北地方太平洋沖地震で発生した造成地盤地すべりにおける変動量観測
釜井 俊孝
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2013 年 53 巻 6 号 p. 282-291

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抄録
 2011年東北地方太平洋沖地震によって,仙台市緑ヶ丘4丁目では造成地盤地すべりが発生した.ここでは,約1年間にわたる地すべり変動(地表傾斜,地中傾斜),地表地震動,間隙水圧の精密動的観測結果を報告する.この斜面では,本震から10~11か月後まで,地山を巻き込む重力性の斜面変動が継続した.しかし,地中傾斜は盛土下底のすべり層で最大であり,盛土全体の地すべりが,今回の斜面変動の主体である.地中傾斜の地震応答は,すべり層や亜炭層など地盤内の弱層で最大となり,それよりも上部の盛土では増幅率が小さくなる傾向が認められた.この弱層による免震効果は,弱層の層厚や地震の震央距離によって異なり,地すべりの構造が,地震応答に強く影響を及ぼしている.過剰間隙水圧は最大水平地動速度にほぼ比例して増加した.この関係から,80 cm/sを越える強震動によって,過剰間隙水圧の増加によるすべり層強度の喪失が発生し,地すべりに至ったと推定される.また,すべり層における局所破壊が成長し,より規模の大きい地すべり変動に発展する過程が観測された.今回のような精密動的観測は,強震時における地すべりの挙動を知るうえで,基礎的な知見を提供するものとして重要である.
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© 2013 一般社団法人 日本応用地質学会
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