応用地質
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論文
岩石の風化程度および削剥前線に支配された表層崩壊発生場
-和泉層群の事例-
松澤 真千木良 雅弘土志田 正二中村 剛
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2014 年 55 巻 2 号 p. 64-76

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抄録

 2004年の台風15号と21号の豪雨により,愛媛県新居浜市の白亜系和泉層群分布地域で,表層崩壊が多発した.本研究では,地質調査,崩壊地調査,および詳細地形解析を行い,これらの崩壊発生場の地質地形的特徴を明らかにした.和泉層群は従来豪雨によって崩壊しやすいとは考えられていなかった地質である.調査地は主に砂岩,泥岩,細礫岩の互層で構成され,これらの地層は,それぞれの岩石の量比などによって区分されるが,崩壊はこれらの地層に偏りなく発生していた.崩壊は,岩石の風化の程度と地形に規制されて発生していた.風化程度は,弱,中,強と3区分され,強風化岩上の土層の崩壊密度が224か所/km2ともっとも高く,次に中風化岩上の土層の崩壊密度が同面積内に153か所/km2であった.航空レーザ測量データを用いた地形解析により,2004年の崩壊とそれ以前の崩壊地形および遷急線が検出できた.2004年の崩壊とそれ以前の崩壊の冠頂は地形図上で遷急線に沿って並んでおり,この遷急線は「削剥前線」とみなすことができる.この削剥前線の直上で,かつ,強風化岩分布斜面が豪雨による崩壊の危険性がもっとも高い斜面である.

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© 2014 一般社団法人 日本応用地質学会
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