応用地質
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論説
深層崩壊の場所の予測と今後の研究展開について
千木良 雅弘
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キーワード: 深層崩壊, 地すべり, 予測
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2015 年 56 巻 5 号 p. 200-209

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抄録

深層崩壊は,急激な動きと長距離移動を伴い,甚大な災害を引き起こすため,その災害軽減には,場所を予測することが第一に必要である.本論では,深層崩壊の実績に基づいて,発生場所の地質・地形的特徴,および発生危険度についてとりまとめ,最後に今後の研究について展望した.降雨による深層崩壊は,大抵の場合それに先行して重力斜面変形が生じていることから,重力斜面変形のタイプを分類し,これに斜面上部の小崖の有無,斜面下部の崩壊の有無などの地形的特徴を加味して発生危険度を4段階に区分した.地震による深層崩壊には,発生前の斜面不安定化過程がいくつか認められる.1つ目は化学的風化,2つ目は重力斜面変形,3つ目は事前に地すべりが対岸に衝突し,その後下部を侵食などによって切断され,不安定化している場合,4つ目は地震時に水が地下から噴出して発生する地すべりである.深層崩壊に関連して,今後次のような研究の展開が期待される.重力斜面変形の地震時不安定化,ハロイサイトに富む土の動的性質,さらに,粘土や岩石のせん断強度の速度依存性,降雨の高解像度計測とリンクした斜面内部の水の挙動と斜面の不安定化の解明である.

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© 2015 一般社団法人 日本応用地質学会
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