抄録
山体の重力変形は,深層崩壊や大規模な地すべりの発生のほか,岩盤の緩み,地山掘削時の斜面変動などに密接に関連している.山体の重力変形は,空中写真判読が普及し始めた頃から,二重山稜や山向き小崖など特異な地形をもとに指摘され,その地形地質環境の特徴の記載と成因の推定が進められてきた.近年普及した航空レーザ測量を用いることにより,斜面の段差や凹地などの微地形を高精度に把握することが可能となった.航空レーザ測量から構築される超細密DEMを用いて地形画像を作成し,微地形の解析を行うことにより,従来から記載されてきた地形的特徴をより高精度に記載することができる.微地形の斜面上の位置や形状,規模,微地形群の組み合わせなどから類型化し,重力変形の範囲や変形機構の推定を試みた.線状凹地などの微地形の成因を推定し,斜面上部と下部の地形の組み合わせと地質構造に基づいて変形のタイプ分類を行うことにより,変形の広がりや深さ,変形様式,安定度を定性的に推論することが可能である.