2016 年 56 巻 6 号 p. 308-315
筆者らは,トンネルの供用後に盤ぶくれや壁面変位が増加したトンネル,および一次支保の完成後に盤ぶくれが発生し,縫い返しを行った2つの近接したトンネルにおいて,地質調査時のボーリングコアを試料として劣化の経時変化や含有鉱物を分析した.また,両トンネルの舗装面上で屈折法地震探査を実施し,弾性波速度の分布から舗装面下の地山の健全性を診断した.両トンネルは近接しており,主な地質は熱水変質作用を受けた自破砕部を含むデイサイト,安山岩溶岩および火砕岩からなる.両トンネルの岩石の調査と試験の結果,比較的硬質な岩石であっても経時的に劣化や膨張が進行した.また,岩石の経年観察の結果,比較的早期に再観察することで,中長期的に劣化する範囲を特定できる場合のあることが示唆された.さらに,屈折法地震探査の結果,舗装面から深度10m以浅の弾性波速度は,縦断方向への変化,ならびに変状の発生した区間の一部では,その周辺に比べて表層の弾性波速度が低い傾向を確認した.