応用地質
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論文
高規格道路のルート選定における地球化学的リスク評価
門間 聖子細野 哲久
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2016 年 57 巻 2 号 p. 58-67

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抄録

高規格道路のルート選定に際し,自然由来の重金属リスクを地球化学的手法により評価した.評価に際しては,候補2ルートを包括する地域を1km四方のメッシュに区分し,メッシュごとに1地点の土壌を採取して重金属類の全含有量分析を行った.その結果,銅,鉛および亜鉛の濃度が強い相関性を示し,これらの元素が鉱化作用やそれに起因する鉱物の共生関係と強い相関があることが示された.また,各元素の濃度について多変量解析を行った結果,第1因子得点が銅,鉛,亜鉛,水銀および砒素の濃度との強い相関を示し,鉱化作用の指標として有効であることが示された.これらの結果を踏まえ,多変量解析により得られた第1因子得点分布に基づき地球化学的にリスクの低いルートを選定した.当該ルートにおいて実際に道路建設が行われた結果,重金属リスクを有する掘削発生土の発生割合は7.8%の予測に対し実績は7.4%となり,予測と良好な一致が認められた.これらの結果から,地球化学的リスク評価は鉱化作用が見られる地域において重金属リスクがより低いルートを選定するために有効な手法であることが示された.

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© 2016 一般社団法人 日本応用地質学会
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