2019 年 60 巻 5 号 p. 216-229
表土の黒色土については,従来,色に基づいた多様な呼び方があり,とくにその成因が火山灰と結びつくことで黒色土の成因や表土区分が混乱していた.阿蘇火山周辺は,火山灰や非火山灰の堆積があり,それらを母材とした表土との関係を明らかにできる地域である.そこで,母材が火山灰の①仙酔峡地点,火山灰質の②泉川地点,ほとんど火山灰を含まない③大観峰地点の表土を研究対象とした.阿蘇火山地域の黒色土のうち火口に最も近い①の表土の黒い色調は有色鉱物によることが野外観察で明らかになった.火口から遠い③の表土はクロボク土とローム質土で,その色は微粒炭によるものであることが明らかになったので,それより火口に近い②の表土の成因との区分が問題となった.②,③の試料を脱色処理,及び可溶腐植・微粒炭の分析,色分析を行い,③の表土の諸データを基準に②の表土の着色の主因を検討した.その結果,着色は可溶腐植,有色鉱物,土壌化物(鉄の酸化物・水酸化物,粘土鉱物等)によるものであることが判明し,それらに基づいて②の表土を区分した.以上,風成堆積物として①,②,③の表土の調査結果を集約し,主要着色物質による表土区分を行った.