応用地質
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論文
地質材料としての石材の一軸圧縮強度と利用時期との関係について
藤井 幸泰
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キーワード: 凝灰岩, 砂岩, 安山岩, 花崗岩
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2021 年 61 巻 6 号 p. 313-320

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抄録

地震が多い日本では,安定陸塊に位置する諸国と比べて石造構造物が少ないとされる.しかし全国を見渡せば,各地で産出する様々な種類の岩石を利用し,各々の地域あるいは各時代の利用形態にあわせた石材としての利用がみられる.大谷石,来待石,多胡石,稲田石,小松石の5つの石材を取り上げて,岩石の種類や地質的背景について説明を行う.さらに石材の採取や加工のしやすさに関わる一軸圧縮強度の値,ならびに石材としての利用開始時期を文献調査によって明らかにした.堆積岩である凝灰岩の大谷石,砂岩の来待石ならびに多胡石は一軸圧縮強度がおよそ50MPa以下であり,古墳時代から利用が知られている.一方,強度が100MPaを超す火成岩の稲田石と小松石は,平安時代以降に利用されるようになった.輸入石材が多用されている昨今であるが,今回取り上げた石材のうち,現在も稼働している採石場は存在する.地元産業として継続できることを願うばかりである.

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© 2021 一般社団法人 日本応用地質学会
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