2021 年 62 巻 3 号 p. 170-180
岩石の空隙径とその体積頻度分布は,岩石中を流れる流体の流れやすさの重要な指標である.空隙径分布を測定する方法の一つに水銀圧入法があるが,再現性および測定しやすさから現在も多くの分野で活用されている.一方,水銀の昇圧速度や昇圧方法の違いによる影響についてはあまり議論されていなかった.そこで4種類の岩石試料を用いて空隙径分布の昇圧速度依存性を評価した.連続昇圧実験と多段階ステップ昇圧実験の結果に大きな違いは認められなかった.花崗岩とドレライトは浸透率が小さいにも関わらず大きい空隙(>10μm)の占有体積率が大きい結果が得られた.圧入曲線の特徴から,この大きい空隙は流体移動に関与しない試料表面凹凸の空隙である可能性が高い.そこで浸透性に影響を与える有効空隙径を推定し,有効空隙率と代表空隙径を評価した結果,有効空隙率は昇圧速度増加とともに減少し,砂岩は最大有効空隙径と代表空隙径が速度増加とともに増加した.この結果は,小さい空隙に水銀が浸入するのに一定時間を要することと,空隙内で局所的な圧入圧力の増加を示唆する.有効空隙径分布を用いてパーコレーションモデルから推定した浸透率は実測値と整合的であった.