応用地質
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62 巻, 3 号
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論文
  • 宮地 修一, 王 婷, 長谷川 修一, 山中 稔, 野々村 敦子
    2021 年 62 巻 3 号 p. 156-169
    発行日: 2021/08/10
    公開日: 2021/11/07
    ジャーナル フリー

    近年,活断層が認定されていない地域での甚大な内陸型地震被害も報告されており,平野における伏在活断層調査が課題となっている.変動地形のみから地表面変位を伴わない活断層を探し出すことには限界があり,新しい手掛かりが必要とされる.活断層による鉛直変位は,たとえわずかな撓曲であっても累積すれば,帯水層に大きな層厚変化をもたらすことから,扇状地における瀬切れの形成要因の一つと考えられる.本研究では,香川県中央部の香東川扇状地の瀬切れ地点において,常時微動探査,2次元微動アレイ探査および電圧差分法電気探査の物理探査を実施し,水理地質構造を総合的に解析した.その結果,帯水層厚の大きな変化が伏在活断層である仏生山断層(仮称)の撓曲構造を反映したものである可能性が高いことが分かった.本事例は,扇状地における瀬切れが伏在活断層を発見する手掛かりになることを示しているものと考える.

報告
  • 谷川 亘, 多田井 修
    原稿種別: 報告
    2021 年 62 巻 3 号 p. 170-180
    発行日: 2021/08/10
    公開日: 2021/11/07
    ジャーナル フリー

    岩石の空隙径とその体積頻度分布は,岩石中を流れる流体の流れやすさの重要な指標である.空隙径分布を測定する方法の一つに水銀圧入法があるが,再現性および測定しやすさから現在も多くの分野で活用されている.一方,水銀の昇圧速度や昇圧方法の違いによる影響についてはあまり議論されていなかった.そこで4種類の岩石試料を用いて空隙径分布の昇圧速度依存性を評価した.連続昇圧実験と多段階ステップ昇圧実験の結果に大きな違いは認められなかった.花崗岩とドレライトは浸透率が小さいにも関わらず大きい空隙(>10μm)の占有体積率が大きい結果が得られた.圧入曲線の特徴から,この大きい空隙は流体移動に関与しない試料表面凹凸の空隙である可能性が高い.そこで浸透性に影響を与える有効空隙径を推定し,有効空隙率と代表空隙径を評価した結果,有効空隙率は昇圧速度増加とともに減少し,砂岩は最大有効空隙径と代表空隙径が速度増加とともに増加した.この結果は,小さい空隙に水銀が浸入するのに一定時間を要することと,空隙内で局所的な圧入圧力の増加を示唆する.有効空隙径分布を用いてパーコレーションモデルから推定した浸透率は実測値と整合的であった.

  • 植田 律, 阿南 修司, 梶山 敦司
    原稿種別: 報告
    2021 年 62 巻 3 号 p. 181-186
    発行日: 2021/08/10
    公開日: 2021/11/07
    ジャーナル フリー

    福岡市地下鉄七隈線延伸工事における道路陥没のような土木事業で発生する事故の多くは,地質・地盤の不確実性に起因するものであり,地質・地盤の不確実性が及ぼす事業への影響は地質・地盤リスクと呼ばれている.公共事業において地質・地盤リスクを適切にマネジメントするためには,事業の前段階でその要因を把握しておく必要がある.しかし,リスク要因について大局的に分析された事例は少ない.

    本研究では,公共事業の過去6年分の再評価資料を収集し,分析を行った.まず,事業費の増額の要因を分類し,要因ごとに金額を整理した.さらに,増額の発生段階を設計又は施工に区分し,その要因を事前に想定していた際には,地質・地盤の「分布が乖離した場合」又は「性状が乖離した場合」に区分した.その結果,事業費の増額は,地質・地盤に関する要因によるものが6年間の合計で約2兆円であり,最も金額が大きい要因は,「想定より悪い地質」であった.また,地質・地盤の分布の乖離は主に設計段階に,性状の乖離は主に施工段階に現れることがわかった.地質・地盤の性状は,値のばらつきという特徴を持つことから,分布よりも乖離の幅が大きいと考えられる.

解説
連載講座 地質体における土木地質調査の要点
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