応用地質
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論文
令和2年7月豪雨時の球磨川洪水流の流速と被害
黒木 貴一
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2022 年 62 巻 6 号 p. 355-362

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抄録

令和2年7月豪雨時の球磨川の洪水に関し,地理院地図の斜め空中写真で表面流速としての流速と流向を求めた.ステレオペアの空中写真で漂流物の移動を確認した後に,それらからオルソ空中写真を作成した.その写真から漂流物移動の距離と流向を測定し,距離と撮影時間の間隔から流速を求めた.流速と流向の分布図では洪水流の空間的な特徴を確認できる.流速は河道の概ね中央に流心があり,そこから岸に向かって次第に遅くなる.流向は流心付近で河道方向にそろい,河岸付近で乱れる.縦断方向に見ると,流心の中で流速のより速い場所が,約150~200mの間隔で現れる.また河道屈曲による流心の位置や流向の変化,川幅変化による流速や流向の変化,本流に対する支流の流速や流向の特徴も読み取れた.

流速の緩急が被害状況の大小に整合的であり,流速低下と土砂堆積の場所がよく対応するため,本手法は洪水流の流速と流向を求める一つの現実的な手法となる.また斜め空中写真を用いたSfMとGISによる解析で得た流速と流向の地図化は,洪水被害の事象解明と軽減対策の基礎資料を提示することができる.これは今日多様化する応用地質学の中で環境・災害問題の調査に対し有効な手段になると考える.

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© 2022 一般社団法人 日本応用地質学会
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