応用地質
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62 巻, 6 号
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論文
  • 黒木 貴一
    2022 年 62 巻 6 号 p. 355-362
    発行日: 2022/02/10
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル フリー

    令和2年7月豪雨時の球磨川の洪水に関し,地理院地図の斜め空中写真で表面流速としての流速と流向を求めた.ステレオペアの空中写真で漂流物の移動を確認した後に,それらからオルソ空中写真を作成した.その写真から漂流物移動の距離と流向を測定し,距離と撮影時間の間隔から流速を求めた.流速と流向の分布図では洪水流の空間的な特徴を確認できる.流速は河道の概ね中央に流心があり,そこから岸に向かって次第に遅くなる.流向は流心付近で河道方向にそろい,河岸付近で乱れる.縦断方向に見ると,流心の中で流速のより速い場所が,約150~200mの間隔で現れる.また河道屈曲による流心の位置や流向の変化,川幅変化による流速や流向の変化,本流に対する支流の流速や流向の特徴も読み取れた.

    流速の緩急が被害状況の大小に整合的であり,流速低下と土砂堆積の場所がよく対応するため,本手法は洪水流の流速と流向を求める一つの現実的な手法となる.また斜め空中写真を用いたSfMとGISによる解析で得た流速と流向の地図化は,洪水被害の事象解明と軽減対策の基礎資料を提示することができる.これは今日多様化する応用地質学の中で環境・災害問題の調査に対し有効な手段になると考える.

報告
  • 早川 健太郎, 黒台 昌弘
    2022 年 62 巻 6 号 p. 363-367
    発行日: 2022/02/10
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル フリー

    建設現場では,盛土や切土等の施工により日々地形が変化しており,工事の進捗を確認するため測量機器を用いてその変化量を計測している.東日本大震災発生後の大規模復興工事においては,数十万m3単位の土砂を移動することも珍しくなく,こうした工事の工程を管理するために,設計土量に対しての進捗状況を高い頻度で正確に把握している.筆者らは,建設現場での地形変化(土量)を正確かつ容易に計測するため,UAV(ドローン)を用いた写真測量を活用し,建設現場の進捗管理を行った.すなわち,UAVによる空撮写真をSfM/MVS処理して3次元点群データを作成することで,正確な地形を面的に把握した.設計データと計測データの比較や,計測データの時系列的な変化量を求めることで,日々の土砂の運搬量や今後の作業量を求めることが可能であり,実際の現場適用を通じてこの手法の有効性を確認した.また,こうした現場では盛土や切土の施工が進むことで起伏に富んだ地形となるので,空撮写真の地上分解能を一定に保つためにUAVの飛行高度をコントロールする工夫も行っている.この方法は,建設工事のみならず,土砂災害後の地表面の変状把握やその後の復旧にも役立てることができる.

  • 濱田 俊介, 岸浦 正樹, 佐藤 誠一, 阿部 徳和, 白井 太郎, 相澤 隆生, 土屋 彰義, 長屋 和宏, 植田 彰
    2022 年 62 巻 6 号 p. 368-376
    発行日: 2022/02/10
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル フリー

    インフラ施設のネットワークにおける液状化対策の重点化及び優先度評価の検討では,液状化ハザードマップを整備することが重要である.筆者らは,これに先駆け,地質・地盤の分布の複雑さや液状化被害要因となる地盤特性を反映した3次元地盤構造モデルを10地域で試作し,高精度な液状化被害予測を行う方法を検討した.

  • 梶山 敦司, 阿南 修司
    2022 年 62 巻 6 号 p. 377-383
    発行日: 2022/02/10
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル フリー

    防災や減災を考える上で,地すべり等の発生しやすい場所や発生した場合の大きさを予測することは重要である.一般的に地すべりの発生しやすい場所や平面的な大きさは,地形判読などによって整理が行われている.また,地すべりの規模を決めるために必要な深さは,砂防事業を主体とした滑動している地すべりを対象として,平面形状と深さの関係が整理され,ブロックの深さを推定する手法として活用されている.現在整理されている平面形状と深さの関係を今より発展させるためには,現在滑動していない地すべりも対象とした整理が必要になると考えられる.このことから,本研究では,机上検討で整理できる平面範囲から深さを想定できるようにするために,ダム建設時に行われる貯水池周辺地すべりの検討結果(23ダム,214ブロック)を収集・整理し,分析した.分析では机上検討から得ることのできる平面範囲と深さの関係を整理し,その最小値と最大値の分布範囲を求めた.その結果,幅(W)と最大深さ(D)の関係はD=0.45×Wが最大値になること,長さ(L)と最大深さ(D)の関係はD=0.40×Lとなることが分かった.

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