2023 年 64 巻 5 号 p. 236-254
2011年4月11日の福島県浜通りの地震(Mw6.7)時,福島県南東部に北北西から南南東に伸びる約14kmの地表変状が生じ塩ノ平断層と命名された.その南方延長上の車断層では地表変状は認められなかった.両断層の活動性評価のため,前者の活動域上の塩ノ平地点と後者の非活動域上の水上北地点で,SIMFIP法による断層スリップ試験を実施した.両地点の断層破砕部への注水に対する水圧モニタリング孔での水圧応答から,断層部を挟む領域の水理特性をGRFモデル(Barker,1988)により評価し,透水係数,比貯留量,及び流れ次元を明らかにした.これらの水理パラメーターは国内外の文献値と整合的で,透水係数及び比貯留量は塩ノ平が水上北よりも大きく,流れ次元は塩ノ平が概ね三次元流であり,水上北が二次元フラクショナル流となる.また計測変位から算定される一軸膨張係数と水理解析での比貯留量の対比から,体積膨張は,前者が三軸,後者が一軸方向で生じると把握された.両地点の相違は,当該断層破砕部に賦存する「水みち」の空間的な発達状況の相違と密接に対応し,両地点の断層活動度に差異を生む要因と水理パラメーター等との関連性が示唆された.