抄録
平成8年2月10日午前8時10分ごろ, 北海道西海岸に位置する一般国道229号豊浜トンネル古平側坑口部上方の岩盤斜面において, 大規模岩盤ブロックが崩落した. 本論文においては, 現地調査・現場試験および室内試験・現地計測によって得られたデータを基に, 岩盤崩落箇所の状況ならびに岩盤崩落箇所周辺の自然環境, とくに地下水挙動の季節変化についての具体的な事実を網羅した上で, 素因と誘因を交えて, 岩盤崩落の発生メカニズムを検討した. その結果, 今回の岩盤崩落には様々な要因が複雑に絡んで影響を与えているものの, 冬季の厳寒条件下におかれた岩盤の表面凍結によって流出口を閉塞された地下水が, 崩壊面となった潜在不連続面に高い間隙水圧を発生せしめたことが主要因であると結論できる.