抄録
本研究では, 汽水域における完新世以降の環境変化と地盤工学的特性を明らかにするために, 出雲平野において連続不攪乱試料を採取し, 地球化学的分析と一連の土質試験を実施した. その結果, 全有機炭素 (TOC), 全窒素 (TN), 全硫黄 (TS) の深度分布を明らかにし, 地球化学的層序の意義を示唆した. また, 完新世における海進, 海退および河川の埋積によって形成された出雲平野の形成過程を明らかにした. さらに, 炭素・窒素・イオウの元素を対象とした地球化学的分析により堆積環境の違いを定量的に評価し, それに地形学的・地史学的な解釈を加えることによって, 理学的, 工学的両見地から出雲平野の形成過程と地盤工学的性質を解明した. また, これまで定性的に考えられてきた土の強度変形特性に及ぼすセメンテーションの効果が, CNS元素分析から得られたCaCO3量によってほぼ定量的に表せることを実証した.
以上のことから, 地盤が有する広域性と土構造物に必要とされる長期性・安全性さらには自然環境との調和を考えた場合, これまでのように地盤工学, 地球化学, 地理学 (海水準変動), 地形学, 地史学等の個々の分野が個別に研究するのではなく, 境界領域を越えた学際的な研究を行うことがきわめて重要であることを示唆している.