抄録
1995年兵庫県南部地震に伴って発生した淡路島北部における地下水変動データを用いて, 当該地域の水理特性 (透水係数の変化の割合, 比産出率 (Specific yield)) を推定した. ここでは, 淡路島北部を横断する断面を用い, Dupuit-Ghyben-Herzbergモデルと単純なDupuitモデルを組み合わせることによって現象を表現することを試みた. 計測された断層沿いの湧出量の経時変化と山地部における地下水位の低下を拘束条件として地震前後の透水係数の変化と比産出率を推定したところ, 透水係数は地震後に地震前の5倍以上に増加し, 比産出率は0.3から1.7%程度であるという結果が得られた. また, 本モデルの結果から, 地震前後の湧水の主成分の変化の原因の可能性として, 帯水層への塩水の浸入に伴う深層地下水の排出が考えられた. さらに, 地震直後の湧水量の増加は, 透水係数の増加の割合に非常に敏感であることから, 地震直後の湧水量の計測が重要であることが示された.