応用地質
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施工データ分析に基づく砂質土地山のトンネル切羽安定性評価に関する考察
木谷 日出男
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1999 年 40 巻 4 号 p. 231-239

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抄録

砂質土地山のトンネル湧水に伴う切羽の崩壊は, トンネル施工の安全性を低下させる重大な要因となる. 本論ではトンネル切羽の安定性を評価する新たな方法の開発を目的として行った事例調査による検討結果を報告する. このうち, 施工データの分析では, 切羽の流出事故の有無等の切羽ごとの条件を調査し, とくに切羽湧水量と地山物性の関係に着目した多変量解析を行った. 主な結果は以下のように要約される.
1. トンネル切羽の湧水量 (Q) の流出発生の境界値は200~300l/minであり, 500l/minを越えるとその他の条件にかかわらず切羽の流出が発生する.
2. その他, 切羽の安定性に密接にかかわる物性値として, 細粒分含有率, 均等係数, 土粒子の密度および60%粒径が抽出された.
ただし, これらの要因は切羽の安定性に関与するが, 分析結果から判断して直接的に切羽安定性を評価するための指標とするだけの精度はないことが明らかとなった. これはトンネル切羽に向かう地下水流の浸透力が地盤が本来持つ切羽を保持しようとする力を越えときに切羽の流出が発生することに起因する. このような観点から, 切羽の自立性はこの二つの要因群からなる力のバランスを評価する必要がある.

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