応用地質
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活断層調査の信頼性を高めるために
向山 栄
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2001 年 41 巻 6 号 p. 333-342

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抄録

1995年度以降全国で実施されている活断層調査は, いくつかの地球科学的な調査を組み合わせて, 最終的に地震発生の長期的予測を求あている. 活断層調査結果は, 適切な土地利用や都市全体の耐震性の向上といった, 社会的な意志決定や合意形成による施策のために用いられるので, 調査結果が信頼できる情報に基づいていることが不可欠である. しかし成果を受けとる行政の防災担当者にとって, 活断層調査の最終結果は表現が曖昧で受け入れにくい. また, 結論を得るに至る過程は非専門家にとっては複雑でわかりにくく, 各調査段階でどのような前提のもとでどのような議論がなされているか, 得られた結果は信頼できるかどうかの判断がつきにくい. したがって, 活断層調査の報告書には, 各調査段階における課題は何か, それがどのように解決されたか, 残されている問題は何かを明示する必要がある. また調査結果の不確実な点が結論にどのように影響するかも明示する必要がある.
また, 予測が確実にできない災害に対する減災の努力を最大限に発揮するには, 調査が行われ正しい情報が提示されるだけでは不十分であり, 関係者の間での信頼できるコミュニケーションが醸成されることが重要である.

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© 日本応用地質学会
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