応用地質
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地質時間にわたる淡塩漸移帯の形成過程と形態変化に関する数値解析的検討 (その2)
動的境界条件下における検討
登坂 博行
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2002 年 43 巻 5 号 p. 306-315

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抄録

地層処分の沿岸域地下立地可能性に関する基礎資料を提供することを目的として, 淡塩漸移帯の位置, 形態, およびその付近の地下水流動場に関する解析的検討を行った. 本報では, 前報 (その1) に引き続き, 海水準変動, 地殻隆起, および地下施設建設に伴う動的境界条件下での感度解析を行い, 以下の諸点をまとめた.
(1) 地質時代における海水準変動の繰り返しの結果として予想される現在の淡塩漸移帯形状は, 地下深部に行くに従いGHYBEN-HERZBERG的平衡形態とは大きく異なる可能性のあることが示唆された. これは海退と海進の速度的ちがい, および最後の海進から現在までの時間が短く, 地下深部では海退時の淡水の張り出し効果が残存するためと考えられる. すなわち, 静的境界条件下での形態予想は実サイトの評価には不適当となる可能性が大きいことも示唆している.
(2) 地下施設建設に伴う地下水位低下, 淡塩漸移帯の引き込み, および埋め戻し後の水位回復は百年オーダーで起こると考えられるが, 埋め戻し後の淡塩漸移帯の位置回復にはより長時間 (数千~1万年オーダー) を要すると予想される.

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© 日本応用地質学会
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