抄録
生態系保全と持続的土地利用を目的とする新しい学問体系として, 応用地生態学を提唱する.
現在, 生態系保全を目的とする工学として, 生態工学, 緑化工学などの分野がある. これらは, 生態学や植物学等の理学と工学, とくに土木工学の融合による学問である. ところで, 理学分野で地生態学 (景観生態学) という分野があることは, これまであまり知られていなかった. 地生態学は地理学の一分野として発達した学問で, 地形や地質の条件と生態系の関係を研究する学問である. この地生態学, あるいは景観生態学が, 近年, 土木工学の分野で注目・活用されつつある. しかし地生態学を工学に応用する学問 (応用地生態学) の体系化は応用地質学者が先導を切って行うべきである.
地盤環境とその変化を把握することは応用地質学の得意分野であり, かつ役割である. 環境保全においては, 生態学だけでなく, 地形学や地理学・土壌学・水文学・土木工学なども含めた総合的な協力が必要であるが, 応用地質学は元来これら全ての分野と密接に関連しており, マネジメントを行いやすい位置にある. 今後, 応用地質学は, 生態系保全や持続的土地利用を目的とした地盤環境の調査・解析・評価・対策のあり方を真摯に考え, 他分野と協同して新しい技術体系を確立しなければ, 環境分野で取り残された存在になる.