応用地質
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酸性水発生に関わる掘削残土の応用地質学的検討
鉱山に近接して施工される八甲田トンネルにおける岩石特性評価法
服部 修一太田 岳洋木谷 日出男
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2003 年 43 巻 6 号 p. 359-371

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抄録
鉱山跡地の掘削残土処分地などからの強酸性で重金属を含む湧水による周辺河川の汚染や, 土木工事における岩盤掘削に伴う酸性水浸出による汚染が報告されている. これらの問題は, 岩石に含まれる黄鉄鉱が酸化・分解することに起因する.東北新幹線八甲田トンネルは旧鉱山分布域に位置し, 岩石に黄鉄鉱が含まれるため, 掘削残土からの酸性水浸出による周辺環境の汚染が懸念される.
本論文では, 簡易溶出試験, 全岩化学組成分析, 帯磁率測定の結果から, 八甲田トンネルに分布する岩石の溶出特性を把握し, 酸性化にかかわる岩石の判定手法を検討した. 岩石の溶出特性については, 黄鉄鉱の分解による硫酸の溶出が明らかとなり, 泥岩ではそれに引き続き方解石などのCa鉱物の分解による中和作用が働くことがわかった. 岩石の溶出特性と化学組成や帯磁率の関係から, (1) 帯磁率 (火山岩のみ), (2) 簡易溶出試験の1時間後の溶出水pH, (3) 全岩硫黄含有量, (4) 全岩S/Caモル比 (泥岩のみ) により岩石の酸性化にかかわる判定が可能であることが明らかとなった.
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© 日本応用地質学会
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