応用地質
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トンネル地質調査におけるリスクマネジメントシステム導入の提唱
飯酒盃 久夫高橋 努兼間 強楠健 一郎中川 浩二稲崎 富士大石 朗宮村 滋西真 幸久保田 隆二
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2003 年 44 巻 1 号 p. 36-47

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抄録

山岳トンネルは, 地形が急峻で土かぶりが深い立地環境であること, 構造物自体が線状で長いこと, 地質調査数量が圧倒的に少ないなどの特殊性がある. このため, 定点地点での調査となるダムや橋梁基礎の場合と異なり, 地質調査は物理探査の比重が高くなっているが, 同時に困難な技術的・経済的条件を伴っており相対的に予測確信度が低くなっていると言える. しかしこうした調査の不確実性は, 系統的に後工程には十分に伝達されておらず, 調査精度や未解明点が不明瞭なまま設計・施工段階へ引き継がれている. とくに施工段階では事前の地質情報が効率的に活用されず, 安全管理, 原価管理, 工程管理などに大幅な変更を伴うケースが生じ, 調査分野の技術者に対し誤解や不信感が生まれやすいと考えられる. 一方, 近年は入札・契約適正化法の施行, 設計・施工一括発注方式や建設CALSの導入がなされており, 今後は地山情報の透明性, データベース化, 公開制が急速に推進される趨勢にある. ここでは地山情報伝達の不備, リスクコミュニケーション不足の実体把握などについて報告するとともに, 施工段階で発生する地山災害の未然低減対策として, 物理探査などの地質調査段階におけるリスクマネジメントシステムの導入について提唱する.

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© 日本応用地質学会
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