抄録
アジア諸国の多くの地域では, その地質条件および気候条件から地すべり, 斜面崩壊といった斜面ハザードが多発しており, 急速な都市開発を背景にしてその被害はますます増大する傾向にある. これらの被害を未然に防ぎ, あるいは被害を最小限に抑えるために斜面の挙動をモニタリングする計測技術の確立は不可欠である. 本研究は, デジタルカメラで撮影した画像から, 被写体の変形を計測する写真測量の原理を応用した計測法に, 測地網に関する幾何学的な拘束条件から基準点を設置することなく計測点の座標値を求める手法と, 計測点の座標値などの初期近似値を画像から簡便に求める手法を導入することにより, 斜面の変状をモニタリングするのに適した計測法を構築することを試みたものである. 本論文では, 当手法のための理論開発と実際の斜面を使った実験を通して, 簡便な計測によって斜面の挙動を把握できることを実証し, 本研究がアジア諸国における斜面ハザードに対して有効な計測法になり得ることを議論する.