抄録
MT法 (magnetotelluric) は深部探査に有効な手法であり, 地熱や石油資源の探査などに広く用いられている. 本研究では九州中部の活断層として代表的な布田川断層帯にMT法を適用し, 破砕帯の存在に起因した低比抵抗帯の分布形状から深部構造の推定を試みた. 断層に直交するように3本の測線を設定し, 約1km間隔で計32の測点で測定を行った. 人工ノイズの影響を少なくして信頼性の高いデータを得るために, 測定対象地域より100~150km離れた場所で取得されたMTデータと組み合わせ, リモートリファレンス法を適用した. ABIC最小化法による平滑化制約付きMT法2次元インバージョンをデータ解析に用いたところ, いずれの測線にも10Ω・m以下の比抵抗帯が深度1~7kmの範囲に現れ, その幅は200~1000mであった. これらの低比抵抗帯は断層破砕帯と推定され, 北東から南西側に向かって約35°の傾斜で深くなるような分布形態を示した. この構造は, 布田川断層帯の南西側深部での地殻変動による破壊が, 北東側浅部に伝播することにより生じたと考えられる.