応用地質
Online ISSN : 1884-0973
Print ISSN : 0286-7737
ISSN-L : 0286-7737
45 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 麻植 久史, 小池 克明, 高倉 伸一, 吉永 徹, 大見 美智人
    2004 年 45 巻 2 号 p. 60-70
    発行日: 2004/06/10
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    MT法 (magnetotelluric) は深部探査に有効な手法であり, 地熱や石油資源の探査などに広く用いられている. 本研究では九州中部の活断層として代表的な布田川断層帯にMT法を適用し, 破砕帯の存在に起因した低比抵抗帯の分布形状から深部構造の推定を試みた. 断層に直交するように3本の測線を設定し, 約1km間隔で計32の測点で測定を行った. 人工ノイズの影響を少なくして信頼性の高いデータを得るために, 測定対象地域より100~150km離れた場所で取得されたMTデータと組み合わせ, リモートリファレンス法を適用した. ABIC最小化法による平滑化制約付きMT法2次元インバージョンをデータ解析に用いたところ, いずれの測線にも10Ω・m以下の比抵抗帯が深度1~7kmの範囲に現れ, その幅は200~1000mであった. これらの低比抵抗帯は断層破砕帯と推定され, 北東から南西側に向かって約35°の傾斜で深くなるような分布形態を示した. この構造は, 布田川断層帯の南西側深部での地殻変動による破壊が, 北東側浅部に伝播することにより生じたと考えられる.
  • 中田 英二, 大山 隆弘, 馬原 保典, 市原 義久, 松本 裕之
    2004 年 45 巻 2 号 p. 71-82
    発行日: 2004/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    海底下に掘削された岩盤坑道において, 堆積岩試料を採取しその浸水崩壊特性について調査を行った. この結果, 海底下坑道で採取した堆積岩 (粗粒砂岩, 細粒砂岩, 砂質泥岩) は, 一度乾燥させたのち, 蒸留水に浸水させた場合, 崩壊して砂, 泥状になるものが多いことが明らかになった. 一方, 同じく乾燥させた試料を塩水に浸水させた場合, 崩壊しないことが明らかとなった. また採取した試料のうち, 方解石を含有する岩石は蒸留水中でも浸水崩壊しなかった. 海底下のようにNaイオンに富み, スメクタイト含有率が1.5wt%以上の岩石は浸水崩壊しやすく, 透水係数は粘性係数の大きな塩水を通水した方が, 蒸留水を通水した場合よりも大きくなる傾向が認められた. 蒸留水による透水試験終了後, CaCl2溶液を通水させた試料は, 浸水崩壊を起こさなかったことから, 岩石の力学的性質は間隙水に溶存するイオンの種類や濃度, 粘土鉱物の量と層間イオンの種類により異なると考えられた. 地下深部の利用に際しては水質が力学的性質へ与える影響も考慮しておくことが重要と思われた.
  • 寺田 道直, 蛭子 清二, 西山 孝, 楠田 啓, 川上 靖典
    2004 年 45 巻 2 号 p. 83-89
    発行日: 2004/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    鉄塔基礎などに用いられるロックアンカーの引き抜き耐力や定着長の設計は, ロックアンカーのみならず周辺の破壊機構を含めて検討すべきであるが, これらは未だ充分明らかになっていない. そこで, 本研究では, ロックアンカー引き抜き試験時に発生しているアンカー周辺, とくにグラウト部にみられる亀裂をより詳細に観察した. 研究手法は, まず蛍光法を利用して亀裂を可視化し, 次に画像処理法を用いて亀裂の方向と長さに関する定量的解析を試みた. その結果, 従来の目視では確認できなかった, 多数の微細な亀裂を確認することができ, とくに深部では, 浅部とは異なった形態の亀裂が潜在していることがはじめて明らかになった.
  • 柏谷 公希, 米田 哲朗
    2004 年 45 巻 2 号 p. 90-100
    発行日: 2004/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    泥岩と花崗岩の風化過程において発生した亀裂パターンをいくつかの風化程度でマルチフラクタル解析によって特徴付けるとともに, 各種物性値の測定, 顕微鏡観察, 粒子解析, X線回折分析により試料の組織, 鉱物組成を調べた. 得られた一般化次元スペクトルを比較することで亀裂パターンにマルチフラクタル理論を適用する有効性を検討し, 岩石組織, 鉱物組成および風化プロセスと風化による亀裂パターンの関係を考察した. その結果, 以下の知見が得られた.
    (1) 泥岩の乾湿繰り返しで発生する一様な亀裂は空隙率の高さと基質部の細粒で均質な鉱物分布によって, 花崗岩の化学的風化で生じる不均質な亀裂分布は構成鉱物の溶脱耐久性の違いと完晶質粒状な組織によって生じていたと考えられる.
    (2) マルチフラクタル解析によって得られる一般化次元スペクトルは亀裂パターンの複雑さだけでなく不均質さも反映しており, 単一のフラクタル次元による評価よりもはるかに明確な特徴づけを行うことができる.
    (3) マルチフラクタル解析を用いて亀裂形態が保持する情報を抽出し, 風化履歴評価や各種工学的物性値の推定, 岩盤評価に応用できる可能性がある.
feedback
Top