抄録
八戸市周辺の沖積層は最大海抜-45mまで存在し, 下位から, 基底礫, 砂, シルトからなる小中野層, 貝殻片を含む海成粘土や砂で特徴づけられる長苗代層, 縄文時代の貝化石を含み種々の土質からなる類家層の3つの地層に区分できる. 一方, 沖積層下には3つの埋没河成段丘堆積物が存在する. 地表における段丘面・段丘堆積物を基に追跡すると, 古い方から海抜-5~-14mの面は河原木面 (段丘堆積物は河原木層), 海抜-5~-21mの面は田面木面 (段丘堆積物は田面木層) および海抜-24~-37mの面は名久井面 (段丘堆積物は名久井層) として認められた. 土木・建築構造物の支持層を検討する際には沖積層中の礫層や粘性土が問題となる. 小規模構造物なら長苗代層の級化構造を利用した杭設計が可能であるが, 大規模構造物なら長苗代層の礫層の下位に存在する粘性土の圧密沈下の検討が必要であるとともに, 小中野層の基底礫や埋没段丘堆積物を含む洪積層に支持層を求める必要がある.