抄録
経験から学習可能な状態を「開く」「閉じる」という概念で捉え,小学校教師が経験から学ぶための条件について,質問紙調査により初年度1年間を4期に分けて分析した.その結果,初期から春期にかけて,大学新卒教師の場合には未経験の教職全般に困難さを感じる「閉じる」状態が継続するのに対し,講師経験教師の場合には,前任校での経験を活かしながらも現任校との違いに戸惑うことから十分に「開く」状態には至らないことが示された.秋期以降には,大学新卒教師・講師経験教師のいずれも学校行事や研究授業などへの取組み
を通した同僚性の構築を得て「開く」状態へと変化しており,学校における秋期から冬期にかけての取組みと環境が経験学習の成立に深く関連することが示唆された.