スポーツ教育学研究
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小学校児童における走, 跳および投動作の発達: 全学年を対象として
高本 恵美出井 雄二尾縣 貢
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2003 年 23 巻 1 号 p. 1-15

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抄録

本研究では、小学校全学年児童を対象とした走、跳および投運動の観察的動作評価法を作成し、その妥当性、信頼性および客観性について検討すること、走、跳および投動作の発達過程を明らかにすること、ならびに運動能力の発達と動作および体力の発達との関係について明らかにすることを目的とした。以上の目的を達成するために、小学校1年生から6年生までの男女児童230名を被検者とし、50m走、立ち幅跳びおよびソフトボール投げの記録計測とVTR撮影を実施し、撮影されたVTR画像により観察的動作評価を行った。
本研究で得られた主な結果は、以下のとおりであった。
1. 動作パターンの最高得点の基準を成人の成熟型の動作パターンに設定した本研究の観察的動作評価法は、走、跳、投運動のいずれにおいても妥当性、客観性および信頼性の条件を満たしていた。
2. 本研究で作成した観察的動作評価法を用いて、走、跳および投運動の動作を評価した結果、走、跳、投運動のいずれも、動作の完成時期は、先行研究で報告された年齢よりも遅い傾向にあることが示唆された。
3. 走能力の発達は、男子の場合、4年生までは走動作と体力の影響、それ以降の発達は筋力、筋持久力、敏捷性といった体力要因の発達の影響が大きかった。女子では、3年生までの走能力の発達は、走動作と体力の発達の影響、それ以降の発達は筋力、敏捷性といった体力要因の発達の影響が大きかった。
4. 跳能力の発達は、男子の場合、5年生までは跳動作と体力の影響、それ以降の発達は筋力、筋持久力、敏捷性といった体力要因の発達の影響が大きかった。女子は、跳能力と跳動作の発達パターンに類似性がみられることから、跳能力の発達は跳動作の発達に支えられるところが大きかったと考えられる。
5. 投能力の発達は、男子の場合、3年生までは投動作の発達の影響、それ以降の発達は筋力、筋持久力、敏捷性といった体力要因の発達の影響が大きかった。一方、女子は投能力への体力の影響は小さく、投動作が規定要因となっていた。これは、体力の影響を受けるまでの投動作を獲得していないことが原因であったと考えられる。女子では、学習を通して、動作発達を図ることにより、投能力の発達の可能性が示唆された。

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