抄録
重症下肢虚血症 (CLI) においては, 潰瘍治癒を得るまでに複数回の血管内治療 (EVT) を要することが多い. 患者が苦痛なく, 安全かつ円滑に治療が受けられるために, EVT中に鎮静薬を用いる機会も増えている. しかし, その有効性や安全性に関する検討はない. 今回, EVT施行中の鎮静薬使用による患者に対する負担の軽減効果と安全性について検討を行った. 対象は2019年6月から2020年1月の間にEVTを施行された連続93症例. 鎮静薬使用の有無は術者の判断によって決定され, 患者の苦痛の程度はフェイススケール (FS) を用いて評価した. デクスメデトミジン (dexmedetomidine : DEX) 使用群は78例, 非使用群は15例であり, 患者・手技背景からの有意な差は認めなかった. また多変量解析で, 年齢, 性別, 糖尿病, 腎不全, 手技時間, CLIで補正後も, 薬剤使用は疼痛軽減と有意に関連を示した. EVT施行中のDEX使用は, 治療時間を延長することなく患者の苦痛を軽減することができた. 副作用の出現は少なかったが, 対応については熟知しておく必要がある.