日本フットケア・足病医学会誌
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第3回日本フットケア・足病医学会年次学術集会のご案内
特集:足の変形の診かた Up Date
  • 嶋 洋明
    2023 年 4 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

     成人足部変形の中で特に女性に多くみられる外反母趾のほか, 内反小趾についてもその病因と病態について述べる.外反母趾の外的な病因の一つに靴が挙げられ, 変形増悪の要因でもあることから,臨床において履物の指導は重要である.内的な病因として第1足根中足関節の過度可動性や内転中足, 扁平足などが挙げられ, これらは外反母趾変形の増悪や手術成績に影響するため, 診察時にはその有無を評価しておく必要がある.中等度から重度の外反母趾の症例は, 母趾の機能が低下し身体バランスにも影響していることから, 特に高齢者の外反母趾では転倒のリスクも考慮し, 積極的に治療を検討した方がよいと思われる.
     内反小趾には外反母趾を伴ういわゆる開張足を呈する症例がある.症状は履物の圧迫による第5中足骨頭外側の疼痛が最も多く, 内反小趾でも靴の指導は重要である.手術は第5中足骨骨切り術の成績が良好であり, 外反母趾を伴った開張足では内反小趾だけでなく外反母趾も同時に手術を行うことで, 良好な成績が期待できる.

  • 渡邉 耕太
    2023 年 4 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

     屈趾症には屈曲変形をきたす関節やその程度によって槌趾, ハンマー趾, 鉤爪趾,カール趾に分けられる. 屈趾症を診る際には, 趾の解剖と変形に至る成因を考えることが重要である. 趾における外在筋の力は内在筋力に比べ相対的に強い. このような力の相互関係や両筋のアンバランス(外在筋優位)が, ハンマー趾や鉤爪趾変形の発生や進行にかかわる. 一方, カール趾は長短趾屈筋腱の緊張が強いために生じる先天性の変形である. 成因としては, 不適切な履物のような外的成因と, 神経・筋疾患,糖尿病や, 関節リウマチなどの炎症性関節炎, 外反母趾に伴うものなどの内的成因に分けられる. 保存治療としては徒手的な矯正術やテーピング, 適切な靴の選択, 装具療法がある. 手術治療では変形の程度や関節の拘縮の有無により, 軟部組織の手術か骨の操作を伴う手術, または両者を併用した術式が選択される. 軟部組織手術としては関節の解離術や腱切離術, 腱移行術がある. 骨に対する手術としては, 切除関節形成術, 関節固定術, 骨切り術, 人工関節置換術などがある.

  • 平野 貴章
    2023 年 4 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

    【目的】Lisfranc関節損傷では, 解剖学的特徴や機能を理解し治療に当たることが重要である. Lisfranc関節の解剖と病態について文献的報告を加えて報告する.
    【対象および方法】解剖の対象は, 解剖用屍体39体78足 (男17体,女22体) , 平均年齢は84.5歳 (60歳~99歳) であった. 第1中足骨から第3中足骨および第1楔状骨から第3楔状骨を一塊として取り出し, 第2中足骨-第1楔状骨間に存在するLisfranc靭帯複合体の解剖学的特徴および第1楔状骨-第2楔状骨間の楔状骨間靭帯の走行形態を観察した.
    【結果】Lisfranc関節は足根骨と中足骨の間に存在する関節で, 骨形態と靭帯結合により安定性を得ていた. 骨の安定性として, 楔状骨がほぞ構造を形成し第2中足骨が安定した位置に存在する. その上に靭帯性の安定性として背側靭帯・Lisfranc靭帯・底側靭帯の複合体が構成される. 同部位の解剖により, Lisfranc靭帯を囲むように関節軟骨が存在している. Lisfranc靭帯は足底部と平行に走行している骨を結ぶ太い靭帯であり, その付着部平均面積は第1楔状骨81mm², 第2中足骨88mm²であった.
    【考察】Lisfranc関節損傷は, 治療が難しいことが報告されている. この理由として, Lisfranc関節の解剖学的報告でさまざまなバリエーションがあることやさまざまな損傷形態があることが考えられる.

  • 秋山 唯, 仁木 久照
    2023 年 4 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

     足のアーチ構造が破綻し土踏まずが消失したものを総称して扁平足 (flat foot) という. 一般的に小児期, 思春期および成人期に分けられ, 成人期扁平足 (Adult acquired flatfoot deformity : AAFD) の病因はさまざまである. 主な原因となる後脛骨筋腱機能不全 (Posterior Tibial Tendon Dysfunction : PTTD) は, 後脛骨筋腱が変性断裂し, ばね靭帯や足底の諸靭帯や関節包が伸張し, 次第に足のアーチ構造が破綻し扁平足をきたす疾患である. 術式も軟部組織手術と骨関節手術と多くの術式がある. そのため術式選択が統一されておらず, 扁平足に精通した足の外科医により年齢, 腱および周囲の軟部組織の損傷の程度, 関節の変形の有無, 生活習慣などを考慮した術式が選択される. 成人期扁平足の発端は「ばね靭帯の異常」であり, ばね靭帯の病態に応じた治療方法の選択が重要で, 術前の病態の把握にはMRIやtendoscopyが有用である. 前足部を矯正し靭帯断裂部が接するか否かを評価し, 術式を選択する. ばね靭帯に異常をきたす病態として, 外脛骨などにより直接ばね靭帯が断裂し変形が進んでいく一次性断裂と, 後脛骨筋腱損傷によりばね靭帯に負荷が生じ二次的にばね靭帯が断裂する二次性断裂, に大別される.

  • 橋本 健史
    2023 年 4 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

     直立二足歩行を支える足関節,特に後足部の距腿関節, 距骨下関節およびショパール関節に焦点をあて, 機能解剖を検討した. 距腿関節は脛骨天蓋と腓骨がつくる溝に距骨がはまり込む蝶番関節である. 骨性に安定した関節である反面, 内果傾斜角の増大など, その構造に変形が生じると変形性関節症を生じる. 距骨下関節は距骨底面の楕円凹面と踵骨上面の楕円凸面がつくる顆状関節である. 荷重時には, 距腿関節では底屈, 内がえしが生じ, 距骨下関節では背屈, 外がえしが生じるというまったく逆の動きをする. ショパール関節は距骨と舟状骨がつくる距舟関節と踵骨と立方骨がつくる踵立方関節からなる. 後脛骨筋が収縮して内がえしとなると, 距舟関節と踵立方関節の運動軸が交叉して足の剛性が高まり, 安定した足となる. 逆に長腓骨筋が収縮して外がえしとなると, 2つの運動軸は平行となって, 足の剛性が低下して柔軟な足となる.
     後足部の腱には, 後脛骨筋腱の内果後方部とアキレス腱の停止部付近に血管の少ない阻血領域が存在する. 加齢や使い過ぎによって, この部位に血流障害が生じやすく, 後脛骨筋腱に障害が生じたときは, 後脛骨筋腱機能不全となり, 扁平足変形となる.

原著
  • 木村 知己, 山本 康弘, 荒井 靖典, 加藤 雄一, 小山  絵里圭
    2023 年 4 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

     背景: 足潰瘍の創治癒には, 創の重症度, 下肢血流, 感染の程度, 基礎疾患の有無などさまざまな要因が関連する. 栄養状態が不良な患者も多く, 創治癒に影響を及ぼすと考えられる. 栄養評価ツールであるcontrolling nutritional status (以下, CONUT) と足潰瘍治癒の関連性を検討した.
     方法: 単施設, 後ろ向き研究である. 2010年4月から2021年4月までに, 慢性下肢潰瘍を有し, 小切断術を施行した患者136名, 手術肢186肢を対象とした. 術前の血液検査値からCONUT値を判定した. 潰瘍治癒群と非治癒群に分けて統計学的に検討した.
     結果: 治癒群146肢, 非治癒群40肢であり, CONUT値の平均値はそれぞれ4.50±2.63,5.78±2.47であり, 統計学的有意差を認めた (p=0.008). CONUT値と創治癒の関係をROC曲線を用いて解析したところ, カットオフ値は5となった. ロジスティック回帰分析による多変量解析を行ったところ, 人工透析 (p=0.026), CONUT≧5 (p=0.038) で創治癒に影響を及ぼす因子として有意差を認めた.
     結語: 足潰瘍患者において, CONUT値が5以上の中等度, 高度栄養不良症例で有意に治癒率が低下した. CONUTは安価で簡便に得られ, 足潰瘍治療において予後予測に有用な評価項目になり得ると考えられた.

  • 神野 卓也, 臼谷 佳弥乃, 西川 繁, 岡﨑 瑞江, 鶴﨑 清之, 岸本 武利
    2023 年 4 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

     血液透析患者の下肢末梢動脈疾患 (peripheral artery disease: PAD) に対する特定積層型透析器AN69膜透析器の有用性を検討した. 第1趾の皮膚灌流圧 (skin perfusion pressure: SPP) 値が40mmHg以下を示す11例13肢に対し, 対照として中空糸型ポリスルホン (PS) 透析器を用いた. 各透析膜の使用時においてSPPおよび赤外線サーモグラフィを用い, 透析中の下肢末梢血流動態を比較した. 効果判定は①透析開始240分後のSPP値が透析前値に比し維持または上昇, ②サーモグラフィ画像で皮膚表面の血流改善を認めることとし, ①②を満たす場合に効果ありとした. PS膜では全肢で末梢血流改善効果がなかったが, AN69膜使用時では13肢中8肢で改善した. AN69膜はPADに対し透析中の下肢末梢血流動態の改善効果があることが示唆された.

症例報告
  • 藤井 かし子
    2023 年 4 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

     地域高齢者の爪切りを含めた足病変に対するケアの困難感の問題は顕在しているが, 国内外での報告は少ない. 高齢者は爪切りを含めた足のケアが困難であるため, 放置した状態が長く続くと足爪を含めた足の状態が悪化し, 痛みが増強する可能性がある. 皮膚白癬の兆候に気が付かないことも多いため, 白癬菌が爪に移行し, 爪白癬になることも多い. 本稿では, 白癬様の皮膚状態の発見と爪切りができず, 痛みが増強してきた地域高齢者の事例を報告し, 社会に潜在化している高齢者の足の問題について考察する.

  • 長谷川 泰子, 寺師 浩人
    2023 年 4 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

     人工膝関節全置換術 (total knee arthroplasty : 以下TKA) 術後の合併症としての急性下肢動脈閉塞はまれであるが, 診断が遅れると下肢の壊死や切断に至る重篤な合併症の一つである. 今回, TKA術直後に浅大腿動脈閉塞により下腿切断となり, 同部位の創離開症例を経験した. 当科へは創離開後に初診となった. 血流の評価と創部の感染から大腿切断の可能性もあったが, 保存的加療にて治癒を認めた. 創部の変化を認めるたびに血流を評価しそれに対する適切な創傷管理にて治療を行ったため経過について報告する.

  • 森 正志, 平松 佑一, 藤原 玲子, 福永 匡史
    2023 年 4 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー

     左下腿切断を余儀なくされた糖尿病に起因する包括的高度慢性下肢虚血 (chronic limb-threatening ischemia : CLTI) 患者に対し, 術前からサドル付き免荷式歩行器 (以下, 免荷式歩行器) によるトレーニングを導入し義足歩行の獲得に至ったので, その有用性について検証することを本報告の目的とした. 症例は, 67歳女性, 左全足趾から後足部まで潰瘍が拡大し, 救肢困難で下腿切断となった. ADLは独歩で自立していたが, 廃用症候群が進行し, 入院時には中等度から最大介助が必要であった (Barthel index : BI, 30点). 術前から仮義足完成までは, 免荷式歩行器を使用し立位・歩行練習を実施した. そのほか, 松葉杖歩行, ADL練習, 上肢の課題志向型 (家事動作) 練習に取り組み, 義足完成後は積極的に義足歩行練習を実施した. その結果, 退院時のADLは, BIが90点まで改善した. 歩行機能は, 屋外義足杖歩行自立レベルとなり歩行速度0.76m/s, 最大で600mの連続歩行が可能となった. 免荷式歩行器は, 低負荷高頻度で非切断肢の筋力強化, 歩行練習を行うことができるため, 廃用症候群が進行し術前から歩行困難な症例に対しても有用なトレーニング方法であると考えられた.

日本フットケア・足病医学会 役員・評議員名簿
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