成人足部変形の中で特に女性に多くみられる外反母趾のほか, 内反小趾についてもその病因と病態について述べる.外反母趾の外的な病因の一つに靴が挙げられ, 変形増悪の要因でもあることから,臨床において履物の指導は重要である.内的な病因として第1足根中足関節の過度可動性や内転中足, 扁平足などが挙げられ, これらは外反母趾変形の増悪や手術成績に影響するため, 診察時にはその有無を評価しておく必要がある.中等度から重度の外反母趾の症例は, 母趾の機能が低下し身体バランスにも影響していることから, 特に高齢者の外反母趾では転倒のリスクも考慮し, 積極的に治療を検討した方がよいと思われる.
内反小趾には外反母趾を伴ういわゆる開張足を呈する症例がある.症状は履物の圧迫による第5中足骨頭外側の疼痛が最も多く, 内反小趾でも靴の指導は重要である.手術は第5中足骨骨切り術の成績が良好であり, 外反母趾を伴った開張足では内反小趾だけでなく外反母趾も同時に手術を行うことで, 良好な成績が期待できる.