2023 年 4 巻 1 号 p. 34-41
血液透析患者の下肢末梢動脈疾患 (peripheral artery disease: PAD) に対する特定積層型透析器AN69膜透析器の有用性を検討した. 第1趾の皮膚灌流圧 (skin perfusion pressure: SPP) 値が40mmHg以下を示す11例13肢に対し, 対照として中空糸型ポリスルホン (PS) 透析器を用いた. 各透析膜の使用時においてSPPおよび赤外線サーモグラフィを用い, 透析中の下肢末梢血流動態を比較した. 効果判定は①透析開始240分後のSPP値が透析前値に比し維持または上昇, ②サーモグラフィ画像で皮膚表面の血流改善を認めることとし, ①②を満たす場合に効果ありとした. PS膜では全肢で末梢血流改善効果がなかったが, AN69膜使用時では13肢中8肢で改善した. AN69膜はPADに対し透析中の下肢末梢血流動態の改善効果があることが示唆された.