松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
腎動脈下腹部大動脈瘤に合併したPAU の1 症例
野津 長殿本 詠久芦田 泰之松井 泰樹
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ジャーナル オープンアクセス

2009 年 13 巻 1 号 p. 63-66

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抄録

最近penetrating atherosclerotic ulcer (PAU) の概念が明らかにされた。我々はPAU による繰り返し破裂で大動脈周囲に他発結節を形成したきわめて希な症例を経験した。61 歳の女性で背部痛を主訴に来院。ルーチンでのCT で巨大な腹部大動脈瘤が明らかとなり、手術前は転移リンパ節と考えられた大動脈周囲の沢山の腫瘍様病変が見られた。術前診断は正確ではなかったとはいえ、瘤破裂の危険が高く、2000.6.16 外科手術を行った。開腹すると最大径9cm の巨大腹部大動脈瘤があり、瘤壁は厚く、でこぼこで後腹膜などの周囲組織や軟部組織に癒着していた。外科手術はやや手間取りながらも上手くいた。腹部大動脈瘤のなかに多様な潰瘍や瘤壁内の血腫が確認された。潰瘍はぶどうの房のような数個の偽性動脈瘤を形成していた。患者は人工血管移植術を無事に終えた。8 年後のCT でも再発の徴候はない。腎動脈下腹部大動脈瘤のPAU に対する積極的外科治療は動脈瘤破裂による生命を脅かす危険を回避するためには行うべきだろうと結論する。

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