2026 年 7 巻 1 号 p. 59-64
Stewart-Treves症候群 (Stewart-Treves syndrome: STS) は慢性的なリンパ浮腫に続発する極めてまれな血管肉腫である.以前は, 乳癌の術後上肢リンパ浮腫を発生母地として生じる疾患とされていたが, 近年では手術の低侵襲化に伴い, 上肢のSTSはほとんど報告されなくなった.一方で, 下肢STSの報告は増加しており, その多くが子宮癌の術後合併症としての下肢リンパ浮腫に続発している.今回われわれは2例のSTSを経験した.1例は冠動脈バイパス術後, 大伏在静脈グラフト採取部に発生した下肢慢性浮腫, 1例は前方切開法による鼠径ヘルニア修復術後に発生した下肢慢性浮腫を背景に生じたと考えられた.2例ともリンパ浮腫を示す根拠に乏しく, また浮腫に対する治療は行われず, 数十年後に紫斑, 腫瘤が出現して診断に至った. リンパ浮腫に限らず, 腹部, 下肢の術後慢性浮腫を発生母地とする可能性があり, 紫斑を繰り返す場合はSTSを念頭に置く必要がある.