日本遺伝看護学会誌
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最新号
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研究報告
  • 佐藤 信二, 佐々木 規子, 本田 純久, 高尾 真未, 松本 正, 松本 恵, 森藤 香奈子
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 22 巻 p. 1-8
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/06/16
    ジャーナル フリー

    目的:看護師のがんゲノム医療、遺伝看護についての関心や認識を調査し、対象者の属性や経験との関連を検討することで、遺伝看護に関する基礎知識獲得の課題を明らかにする。 方法:がんゲノム中核拠点病院および拠点病院に勤務する看護師2201人に無記名自記式質問紙調査を行った。 遺伝医療・遺伝看護に関する関心および遺伝情報に関する特徴の認識を得点化し従属変数とし、対象者の看護基礎教育や遺伝看護の経験状況など15項目を独立変数に設定して重回帰分析を行った。 結果:1064通(回収率48.3%)の回答を得た。平均年齢は33.7±9.58歳であった。看護基礎教育において遺伝看護の独立した科目があったと回答した112人(10.6%)の最終学歴は大学が80人(71.4%)、年代は20代67人 (59.8%)であった。施設内でのがんゲノム医療、遺伝看護に関する研修および関連学会に参加経験がある者は10%に満たなかった。がん治療に対する経験と関心では、遺伝性乳癌卵巣癌診療ガイドラインやがんゲノム医療の対象者などの内容を知っている者は2%程度であった。がんゲノム医療・遺伝看護の学習機会が必要という回答は約70%であった。重回帰分析の結果から遺伝看護・遺伝医療の関心では、遺伝看護の経験に関連した5項目が、また遺伝情報に関する特徴の認識では、大学卒業以上であることと遺伝性疾患患者への対応の経験があることの2項目が正の関連性があった。 考察:調査時点においてがんゲノム医療は始まったばかりの医療であり、対応経験の少なさや自信のなさが結果に影響したと考えられる。しかし、新たな医療に対しての学習が必要と認識している割合は高く、遺伝看護の経験が遺伝医療、遺伝看護の関心を高める要因となっていた。以上より、特に看護基礎教育において遺伝看護を学ぶ機会がなかった看護師に対し、日常の看護実践と遺伝看護を関連づけることで学習目的を明確にすることが重要と考える。

  • 船木 明日美, 青木 美紀子, 島袋 林秀
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 22 巻 p. 9-16
    発行日: 2023/07/05
    公開日: 2023/07/22
    ジャーナル フリー

    目的:日本の助産師養成課程における遺伝医療・遺伝看護に関する教育について、内容を明らかにすることを 目的とした。

    方法:助産師養成課程を有する教育施設のホームページ及び閲覧可能なシラバスを対象とした。設置主体等の 基本データと、遺伝看護独立科目、臨床遺伝学独立科目、遺伝医療・遺伝看護に関する教育内容を含む科目各々の講義内容等の詳細データを収集した。遺伝医療・遺伝看護に関する教育内容を含む科目についてはキーワード設定、シラバス抽出、データ抽出という手順で行った。得られたデータを大項目、中項目、小項目に分類した。

    結果:対象は211助産師養成課程中155課程( 73.5%)で、大学院38課程(24.5%)、大学専攻科・別科34課程 (21.9%)、大学81課程(52.3%)、短期大学専攻科2課程(1.3%)であった。遺伝看護学独立科目は4課程(1.9%)で開講され、『臨床遺伝学』『遺伝医療における支援』『出生前診断』『先天異常』『遺伝性腫瘍』の5つの大項目、9つの中項目、13の小項目が抽出された。臨床遺伝学独立科目は27課程(17.4%)で開講され、『臨床遺伝学』『遺伝医療における支援』『出生前診断』『着床前診断』『先天異常』『遺伝性腫瘍』の6つの大項目、19の中項目、44の小項目が抽出された。遺伝医療・遺伝看護に関する教育を有する科目は153課程(98.7%)で開講され、『臨床遺伝学』『遺伝医療における支援』『出生前診断』『着床前診断』『先天異常』『女性の健康と遺伝』『遺伝性腫瘍』の7つの大項目、24の中項目、79の小項目が抽出された。

    考察:遺伝看護学、臨床遺伝学を独立科目として教授する課程は限定的であるが遺伝医療・遺伝看護に関する 教育内容は多くの助産師養成課程で教授されていることが明らかとなった。出生前診断の知識や支援方法だけでなく女性の生涯を通じた健康の支援のためにも遺伝医療・遺伝看護の知識は必須である。助産師養成課程だけでなく、看護基礎教育や卒後継続教育内容の充実を同時並行で検討することが重要である。

実践報告
原著論文
  • 中村 由唯, 有森 直子, 宮坂 道夫
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 22 巻 p. 24-33
    発行日: 2023/11/08
    公開日: 2023/11/16
    ジャーナル フリー

    背景:マルファン症候群(以下MFS)はFBN1遺伝子を原因遺伝子とする常染色体顕性遺伝(優性遺伝)性疾 患である。MFS患者において早期かつ適切に診断が行われることは生命予後に関係する心血管症状を防ぐために重要である。しかし現在もMFS患者は適切な早期診断がされておらず、予防的介入の状況に至っていない。

    目的:MFS患者の診断経緯を明らかにする。

    方法:MFS患者11名にMFSと診断された経緯について半構造化インタビューを実施し、Riessmanのナラティ ヴ分析に基づき分析を行った。

    結果:MFSの診断経緯は【パターン1:自分でMFSの臨床症状に気づき、生命予後に関係するイベントをきっ かけに診断される】【パターン2:他者がMFSの臨床症状に気づいたことでMFSと診断される】【パターン3:自己や他者によるMFSの臨床症状の気づきが無く、家族内でのリスクコミュニケーションやライフイベントをきっかけに医療機関を受診し、MFSと診断される】という3つのパターンに分類された。

    考察:MFS患者が生命予後に関わる心血管症状を発症する前に診断されるように、看護職の役割として、 MFSの症状に関する知識を持ち、MFSが疑われる患者やその家族が受診した際には適切なアセスメントを行い、関連職種との連携を取ることが重要であることが示唆された。また、MFS患者の家族内での遺伝情報の共有の状況を把握し、血縁者への情報共有の方法について検討する役割があると考える。受診のきっかけとなるような結婚などのライフイベントについてMFS患者の権利擁護者として意思決定を支援することも看護職の重要な役割であることが示唆された。

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