日本遺伝看護学会誌
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原著
地域の遺伝相談に対する住民のニーズと意義 ―遺伝相談事業における臨床遺伝専門医の経験から―
大西 涼子青木 美紀子
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2020 年 19 巻 1 号 p. 38-49

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抄録

目的:遺伝相談事業に関わる臨床遺伝専門医の視点から遺伝相談事業に対する住民のニーズとその意義、そして地域の遺伝相談に関わる保健師の役割を明らかにする。 方法:遺伝相談事業に関わる臨床遺伝専門医であり、機縁法で研究協力の承諾を得られた3名を対象にインタビューを実施した。インタビューで得られた内容は質的記述的研究法に基づき分析を行った。

結果:遺伝相談事業に対する住民のニーズとして【遺伝/ゲノム医療の変遷に伴い変わる遺伝相談事業のニーズ】【遺伝/ゲノム医療システムの変遷に伴う遺伝相談の場の変化】【今も昔も変わらぬ悩み】【遺伝相談件数が減っている】【住民にとって手の届く相談場所】【素朴な疑問と切実な悩みを話せる】【周囲には言えない遺伝に関する悩みを話せる】【遺伝相談は匿名でも対応してくれる】の8カテゴリが抽出された。遺伝相談事業の意義として、【行政サービスとしての存在】【遺伝相談事業の対象】【医療機関とは大きく質が異なる】【セカンドオピニオンとしての相談】【医療機関につなげるかの見極めをする】【医療機関に効果的につなげる】【地域医療の受け皿としての意義】があり、【臨床遺伝専門医の学び】としての意義も明らかとなった。さらに住民の潜在的ニーズを引き出し遺伝相談事業につなげる保健師の役割と課題として7カテゴリが抽出された。 考察:住民のニーズは遺伝/ゲノム医療と共に変遷するものだけでなく、不変的なニーズも存在する。遺伝相談事業は住民の遺伝に関する素朴な疑問や悩みを身近な場所で相談したいというニーズに対応し、医療機関につなぐ見極めをするという地域特有の意義がある。潜在的ニーズを顕在化するために、保健師をはじめとする地域で活動する看護職の役割の重要性が示唆された。

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