野兎研究会誌
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裏大雪地方における積雪上のイタチ属の行動
樋口 輔三郎柴田 義春桑畑 勤
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1988 年 15 巻 p. 73-87

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抄録
1. 北海道の裏大雪地方に生息すると思われるイイズナ,オコジョ,ホンドイタチ,ミンクについて,雪上の足跡の型,大きさ,歩幅から種の判別基準を立てた。これによって当地方のイタチ類の生息分布をしらべた。2. イタチ類は河川近くの氾濫原,低位河岸段丘,扇状地に生息し,テン,キツネ,ウサギは河川から斜面,峯筋,台地にまで生息していた。とくにテンは台地のトドマツ疎林地に巣が多く見出された。3. イタチ類の行動足跡,発見箇所の分布からみて,集中的に生息する所がみられたが,それ以外は適当な間隔で分布し,餌現存量に左右されるなわばり現象を暗示させるものであった。4. 餌として糞内容からみてエゾヤチネズミが重要な位置を占めていた。イタチ類の集中的にみられた所はエゾヤネズミの高密度の場所であった。エゾヤチネズミの疎密度の所はそれに応じて,なわばりのような分布状態を示していたと考えられる。5. ネズミ駆除のために放獣されたホンドイタチの効果については否定的である。餌現存量からみてもイタチ類を包容する能力に限界があり,在来種との競合は避けられないと思われる。
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© 1988 森林野生動物研究会
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