抄録
症例は80歳男性。耳下腺多形腺腫として経過観察されていたが増大傾向を認めたため,耳下腺癌を疑い拡大耳下腺全摘出術の後,頸部有茎筋皮弁であるsubmental island flap(SIF)による耳下部の再建を行った。診断は上皮筋上皮癌であった。手術翌日から離床し,経口摂取も開始した。
SIFは低侵襲で合併症も少なく,手技も平易である。また顔面皮膚とのカラーマッチングがよく,皮弁採取部の創も目立たず審美性に優れている。遊離筋皮弁の適応を躊躇するような高齢者や全身状態不良例に対して,SIFは有用な代替手段と考えるが,美容重視の点からは顔面の再建において積極的に用いて良い術式であると考えられた。