術後のQOLの観点から,頸胸部食道癌の手術に対し,食道抜去胃管再建ではなく,できる限り局所切除し遊離空腸で再建する方針としている。今回,栄養状態からは遊離空腸再建が望ましいが,大動脈弓近傍の高さまでの胸部食道の切除が必要で,なおかつ,胸骨への侵襲が望ましくない症例を経験した。縦隔内で食道を十分に剥離し上方に引き上げることにより,下方への安全域を確保し,遊離空腸による食道再建を行うことが可能となった。結果的に,胸骨に侵襲をくわえることなく,喉頭温存した状態で,切除再建を完遂することができた。術後特記すべき合併症もなく良好な栄養状態を保っている。