頭頸部外科
Online ISSN : 1884-474X
Print ISSN : 1349-581X
ISSN-L : 1349-581X
20 巻, 2 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
シンポジウム2
頭頸部外傷への対応
  • 大堀 純一郎, 黒野 祐一
    2010 年20 巻2 号 p. 81-85
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    顔面外傷の診断治療は,近年の画像診断の進歩,チタンプレートによる骨折の固定により,以前より格段に進歩している。画像診断では3D-CTの普及に伴い術前の正確な診断が可能になってきているが,その限界も理解して理学所見とともに総合的な診断をすることが重要である。治療では,頬骨上顎骨骨折に対する口腔前庭アプローチでは,十分な整復ができない症例があり,術中超音波検査による整復の確認は,手術の有効な補助となると考えられる。外傷には一つとして同じものはなく,その治療には,個々への対応が必要である。
  • 小林 泰輔
    2010 年20 巻2 号 p. 87-93
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    眼窩吹き抜け骨折は遭遇することの多い疾患であるが,治療方針には議論が多い。通常,受傷後2週間程度経過観察されるが,外眼筋が絞扼している場合や画像上多量の眼窩内組織の逸脱があり受傷直後から眼球陥凹をきたしている場合は,早期に手術に踏み切るべきである。整復術は鼻腔や副鼻腔から内視鏡を用いることにより,多くの例で良好な結果をあげることができる。しかし中には眼球陥凹が残る場合もあり,眼窩底の再建を要する場合もある。眼科や形成外科とも連携して,受傷後適切な時期に手術適応を決め,画像所見と眼科的検査から病態を十分把握して手術に臨み,病態に応じたアプローチ法を選択することが必要である。
  • 梅野 博仁, 千年 俊一, 前田 明輝, 上田 祥久, 松田 洋一, 栗田 卓, 末吉 慎太郎, 中島 格
    2010 年20 巻2 号 p. 95-102
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    喉頭外傷新鮮症例56例の検討を行った。医原性喉頭内損傷症例は除外した。性別は男性39例,女性17例,年齢は6歳から77歳までで,中央値は30.5歳であった。喉頭外傷の原因はスポーツ事故15例,交通事故13例,過失11例,自殺企図9例,労働災害7例,喧嘩1例であった。新鮮症例の内訳は開放性損傷8例,鈍的損傷44例,化学熱傷3例,熱傷1例であった。鈍的損傷についてはTroneらの重症度分類の問題点を挙げ,治療指針となる新しい重症度分類を提案した。
臨床セミナー2
小児耳鼻咽喉科疾患の取り扱い
  • 片岡 真吾, 川内 秀之
    2010 年20 巻2 号 p. 103-111
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    小児において頸部腫脹をきたす疾患はリンパ節病変のほか,先天性の嚢胞性疾患や脈管性疾患が多い。われわれが経験した3症例(川崎病,下咽頭梨状陥凹瘻,嚢胞性リンパ管腫)を提示し,診断および治療上の問題点を検討した。川崎病の症例は,抗菌薬投与で改善されず,γグロブリン製剤とステロイド薬の併用投与で治癒した。下咽頭梨状陥凹瘻の症例は,診断の遅れから深頸部感染症を生じてから受診した例であった。嚢胞状リンパ管腫の症例は,他院で手術後再発をきたした症例であり,当科で再手術を行いその後経過良好である。嚢胞状リンパ管腫やがま腫などの嚢胞性疾患は,外科的摘出術だけでなく,近年はOK-432による硬化療法も有効であるとの報告もあり,十分検討のうえ治療法を選択する必要がある。
ランチョンセミナー1
頭頸部がん患者の緩和ケア
  • 下山 直人, 下山 恵美
    2010 年20 巻2 号 p. 113-118
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    頭頸部がん患者に対する緩和ケアは,在宅医療を含め現状ではまだ十分に行われていない。
    その理由は,痛みだけでなく,心理的な要因も含めた全人的な苦痛緩和を必要とするからである。また,がんに伴う痛みだけでなく,がんの治療に伴う苦痛の緩和も重要である。これに対しては,担当医を中心とした緩和ケア医,精神腫瘍医,看護師などチーム医療が入院,外来,在宅どの分野においても必要である。また,担当医としては,基本的な痛みの治療を習得し,痛みの専門家が必要な難治性疼痛に対しては,適宜コンサルトできるような連携体制を作ることも重要である。
原著
  • 中江 進, 松井 雅裕
    2010 年20 巻2 号 p. 119-122
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    S状静脈洞の前方偏位を呈した危険側頭骨を有する慢性中耳炎を2例経験した。症例1は51歳の女性で,CTにて右のS状静脈洞前方偏位を認めた。症例2は28歳の女性で,右高位頸静脈球と両側のS状静脈洞前方偏位をCTで認めた。2例とも慎重に,上鼓室側壁の一部を削開して,出血なく鼓室形成術を施行できた。偶発的な出血を回避して安全に鼓室形成術を行うためには危険側頭骨や高位頸静脈球に留意することが大切である。
  • ―口内法による手術と高線量率組織内照射―
    力丸 文秀, 松尾 美央子, 檜垣 雄一郎, 冨田 吉信
    2010 年20 巻2 号 p. 123-127
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    病期I,IIの舌扁平上皮癌治療には手術と組織内照射があり,当科ではこれらの両方の治療を施行してきた。今回それぞれの治療効果を検証するため,病期I,IIの舌扁平上皮癌症例につき,死因特異的生存率,再発率,救済率を検討した。3年生存率は手術群で94%,照射群で85%であり,有意差は認めなかったが,手術群のほうが良い傾向であった。原発巣,頸部再発率では手術群は19%,25%で,照射群は6%,33%であった。原発巣再発症例の救済率は手術群67%,照射群100%で,頸部再発症例の救済率は手術群75%,照射群55%であった。頸部再発後の非救済例は6例あり5例が照射群の病期IIであり,早期舌扁平上皮癌症例において病期II症例では組織内照射よりも手術のほうが望ましいと思われた。
  • 松塚 崇, 三浦 智広, 横山 秀二, 鈴木 政博, 野本 幸男, 國井 美羽, 岡野 渉, 西條 聡, 大森 孝一
    2010 年20 巻2 号 p. 129-133
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    リンパ節転移は従来,病理検査で診断するが,OSNA法は遺伝子学的な手法を用いて約30分で診断する方法で乳癌では所属リンパ節転移の診断の補助として保険適用が認可されている。頭頸部領域での有用性を検証した。
    頭頸部扁平上皮癌13症例のリンパ節31個を対象とした。術中転移が疑われたリンパ節を摘出・分割し,迅速病理検査とOSNA法によるCK19mRNAの増幅および検出を行った。
    迅速病理検査では31個中7個が転移ありの結果であり,OSNA法陽性はリンパ節31個中6個であった。偽陰性のリンパ節が1個あり,マクロ標本および病理組織検査にて壊死しており,これを除くと30個全てで一致していた。
    OSNA法は術中のリンパ節転移を従来の病理検査と同等に診断できる可能性がある。
  • 佐藤 宏樹, 小川 武則, 志賀 清人, 大島 猛史, 小林 俊光
    2010 年20 巻2 号 p. 135-139
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    転倒による耳前部より下咽頭に穿通した杙創で辛うじて頸動脈損傷を回避した1例を報告する。症例は51歳男性。剪定中に脚立から転倒し,左耳前部より木片が突き刺さった状態で当院に紹介された。CTでは,木片は左総頸動脈近傍を通り下咽頭近傍に至る像を呈していたが,当院での2回目のCTで患側深頸部から対側頸部・上縦隔に及ぶ増悪する気腫を認め,下咽頭の穿孔を疑った。同日緊急手術を施行し,手術所見では,木片は先端が鈍な約13.5cmの枝で左総頸動脈分岐部間を通り咽頭左外側壁を損傷し穿孔していた。頭頸部杙創は稀であるが,重要血管との関係,咽喉頭損傷の評価に経時的なCT評価が有用であったと考えられた。
  • 谷口 雅信, 渡邉 昭仁, 辻榮 仁志
    2010 年20 巻2 号 p. 141-145
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    Laryngotracheal Flap(LTF)は腫瘍浸潤の及ばない喉頭気管組織を下咽頭癌切除後の咽頭食道欠損部の再建組織として用いる方法であるが,簡便で合併症も少なく,術後の嚥下機能や局所制御も満足行くものであると報告されている。
    症例は79歳男性。下咽頭癌(右梨状陥凹型)T4aN2bM0,stage IVa。併存疾患として慢性閉塞性肺疾患を有し,著しい呼吸機能低下を認めた。根治治療として出来るだけ低侵襲な再建術式による手術治療が求められ,LTFを用いた再建手術を行った。術後に併存疾患の状態悪化や縫合不全や狭窄等の合併症出現を認めず,良好な経過を得た。
  • ―遊離空腸再建時の下方切除と再建の工夫―
    益田 宗幸, 上薗 健一, 田浦 政彦, 江島 正義, 内山 明彦, 福島 淳一
    2010 年20 巻2 号 p. 147-152
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    術後のQOLの観点から,頸胸部食道癌の手術に対し,食道抜去胃管再建ではなく,できる限り局所切除し遊離空腸で再建する方針としている。今回,栄養状態からは遊離空腸再建が望ましいが,大動脈弓近傍の高さまでの胸部食道の切除が必要で,なおかつ,胸骨への侵襲が望ましくない症例を経験した。縦隔内で食道を十分に剥離し上方に引き上げることにより,下方への安全域を確保し,遊離空腸による食道再建を行うことが可能となった。結果的に,胸骨に侵襲をくわえることなく,喉頭温存した状態で,切除再建を完遂することができた。術後特記すべき合併症もなく良好な栄養状態を保っている。
  • 松尾 美央子, 力丸 文秀, 檜垣 雄一郎, 冨田 吉信
    2010 年20 巻2 号 p. 153-159
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    放射線治療は喉頭・下咽頭癌の治療において喉頭機能温存の点で優れた治療法だが,一方で重篤な局所障害を招く事があり喉頭壊死もその一つである。今回検討した喉頭壊死の発症頻度は2.9%で,臨床所見として咽喉頭粘膜浮腫・壊死,喉頭麻痺,皮膚潰瘍,嚥下障害が認められた。また壊死症例のうち88%が照射終了後18か月以内の発症で,喉頭壊死は晩期障害とはいえ比較的早期に発症する事を認識した。治療は保存的に治癒したのが38%,手術が必要だったのが63%で,壊死症例の喉頭温存率は63%であった。喉頭温存目的の放射線治療が,結果として喉頭機能を失わせる事もあり,今後この合併症をいかに減らすかが課題の一つと思われた。
  • 上田 大, 大島 怜子, 石坂 成康, 三牧 三郎
    2010 年20 巻2 号 p. 161-165
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    頸部リンパ節腫脹を唯一の主訴とする前立腺癌症例を経験した。症例は73歳男性。主訴は1か月前からの頸部リンパ節腫脹。リンパ節の生検にて腺房細胞癌と診断し,全身検索を行ったが,明らかな原発巣は不明であった。左頸部郭清術を施行後,外来にて経過観察を行い,再度,原発巣検索のための諸検査をすすめるも,患者が希望せず,術後10か月目に再度の全身検索に同意した。FDG-PETにて前立腺集積,PSA高値のため,前立腺癌を疑い,同部の生検を行ったところ,前立腺と頸部リンパ節の組織型が,一致したため,頸部リンパ節は前立腺癌の転移と判明した。その後,ホルモン療法を施行し,現在,PSAは正常化,頸部リンパ節の再発を認めていない。
  • 滝下 照章, 門田 伸也, 山下 安彦, 山崎 愛語
    2010 年20 巻2 号 p. 167-172
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    Carcinoma showing thymus-like differentiation(CASTLE)は,異所性の胸腺類似腫瘍で,頸部に発生する稀な悪性腫瘍である。病理所見は,扁平上皮癌やリンパ上皮腫様癌の形態を呈することが多い。今回,診断に難渋したCASTLE症例を経験したので報告する。
    症例は23歳女性。左上内深頸リンパ節領域に,4cmの腫瘤を認めた。他部位に病変なく,悪性リンパ腫を疑い生検したが,低分化癌リンパ節転移との病理報告であった。原発不明癌頸部リンパ節転移として手術を施行し,術後化学放射線療法を行った。術後の免染所見でCD5とCD117の陽性が確認され,最終診断に至った。
  • 羽生 昇, 徳丸 裕, 進藤 彰人, 松永 達雄, 藤井 正人
    2010 年20 巻2 号 p. 173-177
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    頸部に発生したextra-abdominal desmoid tumor症例を経験したので報告する。Desmoid tumorは骨格筋の結合織,筋膜から発生する良性の線維性増殖を特徴とし,局所浸潤性が強い病変である。好発部位は腹壁で,頭頸部には少ない。組織学的には悪性所見を認めないが,局所再発が多く治療に難渋することが多い。症例は60歳男性,右頸部の弾性硬の腫瘤を主訴に紹介受診した。MRIでは,右中頸部に大きさ20×30mmで,造影効果のある辺縁不整の腫瘤を認め胸鎖乳突筋内への浸潤が疑われた。確定診断目的に局所麻酔下に生検術を施行し,desmoid tumorが疑われたため,改めて頸部郭清に準じて手術を施行した。術後経過は良好で,現在のところ再発は認められていない。
  • 鎌倉 武史, 松代 直樹, 北村 貴裕, 梶川 泰
    2010 年20 巻2 号 p. 179-183
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    頸部ガス壊疽は非常に重篤な感染症で,早期診断,迅速かつ的確な治療を要するため日常診療において十分注意が必要な疾患である。今回当科ではガス壊疽症例に対し,生理食塩水持続洗浄による創部洗浄を行い,良好な経過が得られたので報告する。症例は77歳男性,主訴は頸部腫脹であった。当科紹介後直ちに切開排膿,デブリードマンを行い,創部に生理食塩水を持続的に還流できるようにして閉創した。術後は気管内挿管にて集中治療室管理としたが,順調に炎症は改善し,術後1週間目には洗浄を終了した。迅速かつ適切な対応が求められる頸部ガス壊疽において,高いドレナージ効果を得るための有効な手段となることが判った。
  • HISAYUKI KATO, TADAO HATTORI, MAKOTO URANO, KAZUO SAKURAI, TATSUYOSHI ...
    2010 年20 巻2 号 p. 185-190
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    We report an unusual case of ectopic cervical thymoma. A 35-year-old female patient presented with an anterior neck mass that developed over a five-month duration. The patient underwent fine-needle aspiration cytology (FNAC) twice, but the tumor type could not be diagnosed. The surgically removed tumor was white in color and had a smooth surface. According to the postoperative pathological examination, the tumor was diagnosed as a Stage I ectopic cervical thymoma and Type B1 according to the Masaoka staging system and the World Health Organization (WHO) histological staging system, respectively. The patient was in good overall health and remained without tumor recurrence at the time of the 10-month follow-up.
    Because it was difficult to make a preoperative definite diagnosis by FNAC for the thymoma, we constructed a cell block from the existing cytological specimen. Immunohistological staining using the cell-block method clearly demonstrated the biphasic cellular population pattern that is a characteristic of thymoma. Therefore, this method may be useful as a preoperative differential diagnostic modality for cervical thymomas.
  • 成田 憲彦, 扇 和弘, 加藤 幸宣, 木村 幸弘, 高林 哲司, 木村 有一, 藤枝 重治
    2010 年20 巻2 号 p. 191-194
    発行日: 2010/10/30
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    今回魚骨異物が原因となり食道粘膜下壁内に膿瘍を形成したと考えられる極めて稀な1症例を経験した。症例は63歳男性で小鯛を食べた直後から嚥下時痛が出現した。近医耳鼻咽喉科を受診したが明らかな魚骨は指摘されず,抗菌内服薬を投与された。抗菌薬内服にて症状改善せず,嚥下困難が出現したため,CT,MRIを行ったところ食道壁内膿瘍を指摘された。食道鏡下に膿瘍の切開排膿を行い,抗菌薬(PAPMおよびCLDM)の点滴投与により膿瘍再形成を見ることなく低侵襲に治癒しえた。
feedback
Top