抄録
頸部に発生したextra-abdominal desmoid tumor症例を経験したので報告する。Desmoid tumorは骨格筋の結合織,筋膜から発生する良性の線維性増殖を特徴とし,局所浸潤性が強い病変である。好発部位は腹壁で,頭頸部には少ない。組織学的には悪性所見を認めないが,局所再発が多く治療に難渋することが多い。症例は60歳男性,右頸部の弾性硬の腫瘤を主訴に紹介受診した。MRIでは,右中頸部に大きさ20×30mmで,造影効果のある辺縁不整の腫瘤を認め胸鎖乳突筋内への浸潤が疑われた。確定診断目的に局所麻酔下に生検術を施行し,desmoid tumorが疑われたため,改めて頸部郭清に準じて手術を施行した。術後経過は良好で,現在のところ再発は認められていない。