抄録
腎細胞癌は血流に富み,遠隔転移しやすい癌として知られており,頭頸部領域への転移も決してまれではない。われわれは腎細胞癌の初回治療から10年近くの期間を経て耳下腺に転移し,耳下腺に対して手術加療を行った症例を経験したので報告する。転移性耳下腺腫瘍の術前診断において,画像検査や穿刺吸引細胞診などの検査では診断の確定が困難であり,腎癌の既往がある症例では,たとえ長期間経過していたとしても常にその転移の可能性を念頭におく必要があり,治療については予後やQOLを考え,個々の症例に応じた治療を行う必要があると考える。