抄録
2011年7月より当科で導入した鼻副鼻腔悪性腫瘍に対する内視鏡下手術の適応と治療成績について検討した。観察期間が1年以上経過した対象症例は6例あり,原発部位は,篩骨洞4例,鼻中隔1例,鼻腔1例であった。TNM分類ではT1:1例,T3:4例,T4a:1例であり,リンパ節および遠隔転移は存在しなかった。病理型は扁平上皮癌3例,悪性黒色腫1例,腺癌1例,奇形癌肉腫1例であった。術前治療として,化学放射線療法2例,重粒子線治療2例および化学療法1例であった。全例が非担癌生存していた。前頭蓋底切除を施行した症例は4例存在し,欠損部には大腿筋膜と鼻中隔粘膜弁を使用した多層性の再建を行い,術後に髄液漏や髄膜炎を来した症例は存在しなかった。鼻副鼻腔悪性腫瘍に対する内視鏡下手術は,適応症例を十分に吟味することで,今後本邦においても広く活用されるものと考える。