頭頸部外科
Online ISSN : 1884-474X
Print ISSN : 1349-581X
ISSN-L : 1349-581X
24 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
パネルディスカッションI
耳鼻咽喉科・頭頸部外科の鏡視下手術
  • 荒木 幸仁, 冨藤 雅之, 山下 拓, 塩谷 彰浩
    2014 年 24 巻 3 号 p. 243-248
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    咽喉頭癌に対する経口的鏡視下腫瘍切除術は,低侵襲な喉頭機能温存治療法として,機器の進歩とともに様々な術式が発展してきた。Transoral videolaryngoscopic surgery(TOVS)は当科で開発した硬性内視鏡下に腹腔鏡用鉗子等を用いた経口的鏡視下切除術である。創部は自然上皮化,基本的に気管切開は行わず,良好な嚥下機能が保たれる。中咽頭,声門上,下咽頭癌の切除可能なT3までを適応とし,治療成績や術後機能ともに良好である。今後は咽喉頭癌に対する機能温存を目指した集学的治療における重要な役割を担うものと考えられる。このTOVSを中心に役割や術式,今後の展望につき解説した。
原著
  • 花澤 豊行, 山﨑 一樹, 大木 雄示, 櫻井 大樹, 茶薗 英明, 岡本 美孝
    2014 年 24 巻 3 号 p. 249-253
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    2011年7月より当科で導入した鼻副鼻腔悪性腫瘍に対する内視鏡下手術の適応と治療成績について検討した。観察期間が1年以上経過した対象症例は6例あり,原発部位は,篩骨洞4例,鼻中隔1例,鼻腔1例であった。TNM分類ではT1:1例,T3:4例,T4a:1例であり,リンパ節および遠隔転移は存在しなかった。病理型は扁平上皮癌3例,悪性黒色腫1例,腺癌1例,奇形癌肉腫1例であった。術前治療として,化学放射線療法2例,重粒子線治療2例および化学療法1例であった。全例が非担癌生存していた。前頭蓋底切除を施行した症例は4例存在し,欠損部には大腿筋膜と鼻中隔粘膜弁を使用した多層性の再建を行い,術後に髄液漏や髄膜炎を来した症例は存在しなかった。鼻副鼻腔悪性腫瘍に対する内視鏡下手術は,適応症例を十分に吟味することで,今後本邦においても広く活用されるものと考える。
  • 近藤 俊輔, 崎浜 教之, 須藤 敏, 梅木 寛, 鈴木 幹男
    2014 年 24 巻 3 号 p. 255-259
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    血管肉腫は全悪性腫瘍の約0.01%~0.02%と非常にまれな腫瘍で,高率に局所再発や遠隔転移を来すため,5年生存率は約10~35%と予後不良な疾患である。発生部位は頭部・顔面の皮膚に多く見られ,鼻副鼻腔の血管肉腫はまれである。血管肉腫に対しての治療は外科的切除が第一選択となるが,補助療法には確立されたものはない。今回われわれは外科的切除により局所制御が得られた,上顎原発の血管肉腫症例を経験したので報告する。
  • 新井 啓仁, 呉本 年弘, 辻川 敬裕, 武藤 陽子, 安田 誠, 松井 雅裕, 中野 宏, 久 育男
    2014 年 24 巻 3 号 p. 261-266
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    2005年4月から2012年3月に京都府立医科大学附属病院耳鼻咽喉科で治療した上顎洞扁平上皮癌T3,T4の19症例について,その治療成績や再発形式を後ろ向きに調べ,動注化学療法併用放射線治療後の切除標本における腫瘍細胞の残存率と予後の関係について検討した。疾患特異的5年生存率が68.4.%,特にT3,T4aは75%程度と良好であった。再発は9症例で,原発巣再発は2例,遺残が2例であった。動注併用放射線治療後の摘出標本で腫瘍細胞が少ないほど,局所制御率が向上し,生存率が良くなる傾向であった。動注併用放射線治療と手術を組み合わせた本治療は,優れた局所制御率,生存率を有すると考えられた。
  • 中村 恵, 笹井 久徳, 鎌倉 綾, 花田 有紀子, 宮原 裕
    2014 年 24 巻 3 号 p. 267-271
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    鼻中隔原発の悪性腫瘍はまれである。今回われわれは,鼻中隔原発の扁平上皮癌に対し,midfacial degloving法を用いて摘出し得た一例を経験した。Midfacial degloving法により,顔面の中央の三分の一を観察することが可能である。また,この方法は,整容的にも非常に優れている。
  • 大脇 成広, 小野 麻友, 丸尾 良浩, 清水 猛史
    2014 年 24 巻 3 号 p. 273-277
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    プランマー病は本邦では比較的珍しく,なかでも小児例はまれである。今回早期に完治させるため手術治療を選択し,良好な結果を得た小児プランマー病例を経験した。
    症例は14歳女児,頻脈精査のため小児科を受診し,血液検査で甲状腺機能亢進が認められた。触診で甲状腺左葉の腫大を認め,シンチグラムで同部に集積があり,プランマー病と診断された。手術目的に当科へ紹介され,抗甲状腺薬で甲状腺機能が正常化した後,甲状腺左葉切除術を施行した。術後経過は良好で甲状腺機能は正常化し,頻脈も消失し再発なく経過している。
    プランマー病治療は手術治療の他に131ヨード内用療法や経皮的エタノール注入療法があるが,本症例のように早期に確実な治療効果を望む症例では外科手術が有効であると考えられた。
  • 鈴木 政美, 新國 摂, 江口 紘太郎, 川田 倫之
    2014 年 24 巻 3 号 p. 279-284
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    口腔扁平上皮癌で顎下腺を含めた標準的頸部郭清を行った症例の顎下腺転移,原発・リンパ節転移の顎下腺浸潤について検討を行った。頸部郭清を行った42例(53側)全例で顎下腺転移は認めなかった。原発と顎下腺を一塊切除した25例のうち舌癌1例,リンパ節転移を認めた31例(33側)のうち舌骨傍領域リンパ節転移2例(2側)で顎下腺浸潤を認めた。顎下腺摘出はQOLを下げる要因となり得ることが報告されており,顎下腺温存の是非についての議論が今後本邦でも必要と思われる。
  • 須田 稔士, 鬼塚 哲郎, 上條 朋之, 今井 篤, 福家 智仁, 飯田 善幸
    2014 年 24 巻 3 号 p. 285-290
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    中咽頭側壁癌のうち経口腔的および経頸部的なアプローチ(Pull-through切除法)にて切除後に遊離皮弁再建を行わず一次縫縮した症例についての検討を行った。手術1次症例60例のうち,Pull-through切除法を行った症例は30例であった。そのうち,切除後一次縫縮を行った19例を対象とした。術後,合併症は1例瘻孔形成認め,経口摂取再開までの期間は7~20日間(平均11.5日)で,入院期間は11日~30日(平均19日)であった。切除断端陽性症例は2例認められ,6例に転移リンパ節の節外浸潤を認めた。これらの症例に対しては,放射線治療を中心とした追加治療を行い,1例に再発を認め原病死となったが,5年疾患特異的生存率は90%であり,良好な治療経過であった。
  • 端山 昌樹, 吉波 和隆, 津田 武, 大崎 康宏, 川島 貴之
    2014 年 24 巻 3 号 p. 291-297
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    頸椎硬膜外膿瘍は脊椎管内硬膜外に膿瘍を形成し脊髄および脊髄根障害を引き起こす疾患である。咽後膿瘍との鑑別を要する2例を経験したので報告する。症例1は蝶形骨洞炎に対して抗生剤治療中に血行性感染を生じ,急速に進行する四肢麻痺が出現した症例,症例2は椎間板炎から椎前間隙に膿瘍を来した症例であった。2例ともMRIのT2強調画像で咽頭後壁に高信号を示す病変を認め,咽後膿瘍が疑われた。咽頭所見と合致せず造影CTを撮影することで鑑別が可能であった。頸椎硬膜外膿瘍は診断が遅れると予後不良な疾患であり,咽後膿瘍との鑑別疾患として重要であると考えられた。
  • 力丸 文秀, 松尾 美央子, 清原 英之, 檜垣 雄一郎, 益田 宗幸
    2014 年 24 巻 3 号 p. 299-304
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    当科では進行頭頸部扁平上皮癌(以下,進行頭頸部癌)に対し集学的治療を行っており,2006年1月より評価可能病変が消失した一次治療症例にS-1内服による維持化学療法を勧めてきた。今回このS-1内服による維持化学療法の有効性を検証するために2006年1月から2009年12月まで一次治療で根治を得られた進行頭頸部癌91例につき,生存率および再発率を検討した。全91例の粗および死因特異的生存率は3年で62%,68%,5年で52%,58%であった。維持化学療法の内服の有無別の粗および死因特異的生存率は,内服群は3年で73%,79%,5年で62%,67%であり,非内服群ではそれぞれ3年で57%,63%,5年で49%,57%であった(p=0.06,p=0.07)。内服の有無による生存率に有意差は認めないものの,内服群の方が,非内服群に比べ,生存率は良い傾向が認められた。
  • 鈴木 法臣, 和佐野 浩一郎, 川﨑 泰士, 行木 英生
    2014 年 24 巻 3 号 p. 305-310
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    甲状腺癌のうち,高分化癌(濾胞癌,乳頭癌)は予後良好といわれているが,その中にも再発を反復,遠隔転移を来たすことで予後不良の経過をたどる一群が存在する。甲状腺癌の根治性をさらに高め,生存率を向上させるためにはこの予後不良群に対する診療方針の検討が必要と考えられる。
    当科における過去11年間の甲状腺高分化癌137例を対象として,再発規定因子を検討したところ,術後の病理所見で「静脈浸潤あり」,「頸部外側区域リンパ節転移あり」,「甲状腺被膜外浸潤あり」が再発規定因子になるという結果を得た。再発のリスクが高いと予測される高分化癌症例に対する今後の治療方針の指標作成を目指した。
  • 西村 剛志, 佐野 大佑, 小松 正規, 矢吹 健一郎, 荒井 康裕, 百束 紘, 田口 享秀, 折舘 伸彦
    2014 年 24 巻 3 号 p. 311-316
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    側頭部から顔面におよぶmyxofibrosarcomaの1例を経験した。症例は74歳,男性。主訴は3年前より増大する左側頭部の膨隆で,肉腫の診断で当科受診となった。生検でmyxofibrosarcomaなどのmyxoidsarcomaの診断となった。また画像診断で頸部リンパ節転移,遠隔転移が疑われたが細胞診,生検等で各々が否定された後に顔面悪性腫瘍切除術を施行した。最終病理診断はmyxofibrosarcoma,pT2bN0G1,Stage Iであった。術後8か月時点での無病生存を確認している。頭頸部領域のmyxofibrosarcomaはまれであるが,本疾患を念頭に完全切除を目指す治療計画が必要があると考えられた。
  • 吉野 綾穂, 中溝 宗永, 横島 一彦, 酒主 敦子, 稲井 俊太, 原口 美穂子, 大久保 公裕
    2014 年 24 巻 3 号 p. 317-321
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    副耳下腺腫瘍手術におけるアプローチ方法には,一定の見解が得られていない。今回,5例の自験例の検討を行い,アプローチ方法について考察した。
    2010年9月から2013年4月までの2年8か月間に直上切開で手術を行った副耳下腺腫瘍は5例であった。平均年齢55歳,男性3例,女性2例。良性腫瘍3例,悪性腫瘍2例であった。
    5例とも充分な術野展開が可能で,末梢側での顔面神経の確認・温存は容易であった。また,筋上皮癌症例では咬筋合併切除を行った際の操作に困難な点はなかった。さらに,術後整容は良好であった。以上の結果は腫瘍直上切開の有用性を示すものであり,敬遠すべき方法でないと思われた。
  • 山崎 恵介, 横山 侑輔, 馬場 洋徳, 渡辺 順, 橋本 茂久
    2014 年 24 巻 3 号 p. 323-328
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    当科にて2007年から2013年までの7年間に,原発性副甲状腺機能亢進症と診断され,手術を施行した20例について検討した。内訳は男性6例,女性14例で,年齢は41~84歳(平均年齢60.6歳),病理診断は,腺腫18例,副甲状腺癌1例,不明1例であった。ほぼ全例に超音波,CT,99mTcMIBI(methoxyisobutylisonitrile)シンチグラフィを行い,局在診断に有用であった。19例に血清Ca値の正常化を認め,1例は正常化しなかった。この症例では甲状腺結節を合併していたため,局在診断が困難であった。局在診断技術が向上しても1腺摘出だけでは対応できない場合もあり,両側検索の対応も常に念頭におく必要があると思われた。
  • 細野 研二, 赤羽 誉, 岡安 唯, 伊藤 妙子
    2014 年 24 巻 3 号 p. 329-334
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    一般的に血管腫の半数以上は頭頸部領域に生じるとされているが,甲状腺の血管腫は非常にまれであり,本邦での過去の報告は検索し得た限りで16例を認めるのみである。今回われわれは甲状腺血管腫を経験したので,文献的考察を加え報告する。
    症例は48歳,女性。前頸部腫瘤を主訴に当科を受診した。画像検査で甲状腺右葉に境界明瞭,内部やや不均一で被膜に石灰化を伴う径7cmの腫瘤を認めた。穿刺吸引細胞診では良性の結果であったが,大きさや画像検査所見から悪性を疑い,甲状腺右葉峡部切除術,D1郭清術を行った。摘出標本は厚い被膜に覆われた腫瘤で,病理組織検査で海綿状血管腫と診断した。
  • ―当科における手技と合併症について―
    西條 聡, 松塚 崇, 鈴木 政博, 池田 雅一, 仲江川 雄太, 大森 孝一
    2014 年 24 巻 3 号 p. 335-339
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    上肢留置式中心静脈ポート留置術(以後,上肢ポート留置術)は癌患者の血管確保や安全な抗癌剤の投与のひとつの方法である。当科で行っている頭頸部癌患者への局所麻酔下上肢ポート留置術の手術手技を紹介し,初期成績を報告した。2010年から2012年の間に30例の上肢ポート留置を行い,全例で留置に成功した。上肢ポート留置30例中4例に感染,4例にポート露出を認めたがポートの抜去で解決し,重篤な合併症は認められなかった。上肢ポート留置の際の皮下トンネル形成群が非形成群と比較して術後ポート露出の頻度が有意に少なかった。上肢ポート留置術は頭頸部外科医も施行できる比較的容易で合併症が少ない安全な手術手技である。
  • 山田 光一郎, 佐藤 進一, 土師 知行
    2014 年 24 巻 3 号 p. 341-345
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    唾液腺腫瘍の術前評価として,穿刺吸引細胞診(FNA)がある。唾液腺腫瘍におけるFNAの有効性を検討した。
    1991年1月~2010年12月の20年間に倉敷中央病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科にて,FNAを施行し,組織学的に確定診断を得た唾液腺腫瘍464例(良性腫瘍403例,悪性腫瘍61例)を対象とした。良悪性鑑別の感度,特異度,正診率はそれぞれ60.4%,99.7%,95.0%であった。組織型まで一致した症例は,良性腫瘍では74.7%(301/403)であったのに対して,悪性腫瘍では26.2%(16/61)であった。
feedback
Top