2014 年 24 巻 3 号 p. 329-334
一般的に血管腫の半数以上は頭頸部領域に生じるとされているが,甲状腺の血管腫は非常にまれであり,本邦での過去の報告は検索し得た限りで16例を認めるのみである。今回われわれは甲状腺血管腫を経験したので,文献的考察を加え報告する。
症例は48歳,女性。前頸部腫瘤を主訴に当科を受診した。画像検査で甲状腺右葉に境界明瞭,内部やや不均一で被膜に石灰化を伴う径7cmの腫瘤を認めた。穿刺吸引細胞診では良性の結果であったが,大きさや画像検査所見から悪性を疑い,甲状腺右葉峡部切除術,D1郭清術を行った。摘出標本は厚い被膜に覆われた腫瘤で,病理組織検査で海綿状血管腫と診断した。