2015 年 25 巻 1 号 p. 85-89
甲状腺癌による広範囲気管合併部分切除および気管壁の再建を行い,術後経過良好であった症例を経験したため,報告する。
症例:25歳男性。他院にて甲状腺右葉の乳頭癌の診断で手術を施行された。術中気管および右反回神経に癒着があり,完全切除できず,当科紹介となった。初診時は右声帯の正中位での固定を認めた。術前の造影CTで,気管右側に造影される気管を内側へ圧排する腫瘤を認めた。
手術および経過:3か月後に残存腫瘍と気管合併部分切除,肋軟骨を用いた二期的気管壁の再建を施行した。気管の右側は膜様部,左側は気管輪1/3まで,上は輪状軟骨から約6気管まで合併切除した。肋軟骨を採取し,一部を縦2枚に割り軟骨板を作成,1枚で気管側壁を形成,残りを後の前壁再建用に気管孔左側の皮下に埋没した。約半年後,気管孔閉鎖術を施行した。皮下に埋めた軟骨を含めた皮弁を作成し,気管前壁を閉鎖した。皮膚欠損部は両側頸部の皮弁を前進させ閉創した。術後気管の形態は良好で呼吸苦もなく,発声も良好であった。