抄録
症例は82歳,女性。脳梗塞を発症し当院ICUに救急搬送され,保存治療中に経皮的気管切開術を施行された。術後2か月で気管腕頭動脈瘻による出血を認めたため,腕頭動脈穿孔部の縫合・前頸筋による縫合部の被覆を施行した。術後3週間目の造影CTにて腕頭動脈仮性瘤の形成を認め切迫破裂が懸念されたため,人工血管置換・大胸筋皮弁再建術を施行した。術後当初は良好に経過したが,約1か月半後に人工血管中枢側吻合部の離開による止血不能な出血を認め,最初の止血術から約3か月で永眠された。気管腕頭動脈瘻は救命困難な合併症であり,日常のカニューレ管理等による予防が大変重要であることが再確認された。