2016 年 26 巻 2 号 p. 259-263
甲状腺分化癌は,外科切除にて良好な予後が期待できる疾患だが,一部には局所進行が激しく手術不能な症例が存在する。一方,甲状腺未分化癌は,手術,放射線,抗癌剤治療の集学的治療を行っても,平均生存期間数か月と予後不良である。このような甲状腺癌の治療に,最近レンバチニブが新たな治療選択肢として追加となった。症例1は手術と放射線治療後に多発肺転移が出現した71歳の甲状腺未分化癌症例で,レンバチニブ投与にて,病変は6か月間不変を維持している。症例2は,87歳の反回神経麻痺を伴う甲状腺乳頭癌で,ヨード治療未実施のまま,レンバチニブを投与。6か月間病変は増大なく,かつ反回神経麻痺は改善した。以上,現段階ではその適応において慎重投与に入る2症例の投与経験について報告した。