上顎全摘術では,外切開による軟部組織の処理,骨削開を行い,翼状突起の切断にはノミが使用される。しかし,良好な視野が得られない中での操作になることや頭蓋底が近いことによる恐怖心のために切除ラインが術前の想定通りとならない可能性が指摘されてきた。上顎全摘術において,外切開に先立ち内視鏡下で鼻腔内の粘膜切断,骨削開を施行することにより,術前に予定した切除ラインで摘出が可能であった上顎洞悪性腫瘍例を経験した。内視鏡併用により,鼻腔内の軟部組織だけでなく,翼状突起,蝶形骨と厚い部分の骨削開を内視鏡下の良好な視野であらかじめ行っておくことで,外側から想定通りの骨切りラインでの切断が容易になると考えられた。