抄録
頭頸部癌領域で脳転移を経験する場合,多くは多臓器転移後であるが,稀に初診時から単発性脳転移をきたす場合がある。症例は71歳の男性で,嚥下時痛を主訴に当科を受診した。精査にて下咽頭から頸部食道に進展する扁平上皮癌を認めた。単発性脳転移以外は,他臓器への遠隔転移なく,全身状態良好なため,優先的に開頭腫瘍摘出術を施行。術後3週間目から原発巣に対し化学放射線療法を行った。その後外来化学療法を続け,脳転移や局所の再燃なく,12か月生存中である。初診時から遠隔転移を有する場合,治療選択に難渋することが多いが,条件を満たせば局所よりも優先して脳転移への積極的治療を行う事は,その後のQOLの維持に重要と思われた。